AWS導入事例 ガバメントクラウドに接続する冗長ネットワークを短期間で構築
コストを抑えながら稼働率99.99%を実現

  • 名古屋市役所様
  • 官公庁
名古屋市役所

導入効果

  • 3か月という短期間でガバメントクラウドへの接続回線構築が完了
  • 10Gbps回線の四重化で稼働率99.99%を実現
  • 最低限の回線コストで三層分離も可能なネットワークを構築

導入背景

1889年10月の市制施行により人口約15万7000人/面積約13.3平方キロメートルの規模で誕生した名古屋市は、現在16の区で構成され、人口232万5778人/面積326.50平方キロメートル(2022年10月1日現在)の大都市に成長。横浜市、大阪市に次ぐ人口を有する国内第3位の政令指定都市である。
2021年5月、政府は「地方公共団体情報システムの標準化に関する法律」を制定し、同年9月にデジタル庁の発足と共に施行した。この法律では、自治体の基幹システムのうち20の業務を2025年度末までに政府の提示する標準仕様に則ったシステムに移行することが必須の取り組み課題として掲げられている。これを受けて、名古屋市はオンプレミス環境で稼働させていた基幹システムをガバメントクラウドに移行することを決定。庁舎とガバメントクラウド間の接続プロジェクトを委託するITパートナー企業としてTOKAIコミュニケーションズを選定した。

名古屋市 総務局 行政DX推進部
デジタル改革推進課
課長補佐(システム標準化担当)
髙島 俊輔氏
名古屋市 総務局 行政DX推進部
デジタル改革推進課
課長補佐(システム標準化担当)
高橋 広和氏

課題

基幹システムの移行先としてガバメントクラウドを検討

2021年5月、政府は地方公共団体情報システムの標準化を必須とする法律を制定した。これを受け、名古屋市は2021年度から本格的に基幹システムを標準化するための検討を開始。この法律の制定以前から、同市はICT活用の姿勢を明確に打ち出していたという。総務局 行政DX推進部 デジタル改革推進課 課長補佐(システム標準化担当)の髙島俊輔氏は、次のように説明する。
「名古屋市では、2019年3月に『名古屋市ICT活用に関する基本方針』を策定し、ICTを活用して市民の皆様に対するサービスや職員の業務を改善する取り組みを進めていました。法律施行後の2023年3月には『名古屋市役所DX推進方針』を策定し、市民サービス向上の観点からは、一例として、窓口手続きを簡素化するスマート窓口化を進めています。職員の業務効率化の観点からも、テレワークの導入やペーパーレス化、RPAの活用などに取り組んでいます」(髙島氏)
同市には30年以上も稼働している基幹システムがあり、システムの刷新が重要なテーマとなっていた。また、基幹システムは市が自前で保有するデータセンターで稼働させていたが、設備の老朽化が激しく、継続利用が難しいという状況も重なっていた。
ICT活用を推進する一方で、システムとデータセンターの設備の老朽化が進んでいた名古屋市は、基幹システムの標準化が義務化されたことを契機に、2021年、システム移行の検討を本格的に開始する。当時の状況について、総務局 行政DX推進部 デジタル改革推進課 課長補佐(システム標準化担当)の高橋広和氏は次のように振り返る。
「クラウドファーストを前提に移行先を検討していた時、2022年4月に政府からガバメントクラウドの情報がリリースされました。ガバメントクラウドは、政府が地方公共団体に提供する政府と共通のクラウドサービスの利用環境です。早期移行に取り組む地方公共団体には、国が費用を補助するというスキームもありました。そこで基幹システムの移行先をガバメントクラウドにしようと考えました」(高橋氏)

要件提示

利用するクラウドにAWSを選択回線の要件は99.99%の稼働率

ガバメントクラウドでは、複数のクラウドサービスが地方公共団体側で選択できるようになっている。また利用形態についても、1団体が単独で専用の環境を利用する単独利用方式と、ITベンダーが構築した環境を複数の団体で分割使用する共同利用方式がある。国内第3位の人口を有する名古屋市が選択したのは、アマゾン ウェブ サービス(AWS)を単独利用方式で利用する形だった。
「AWSを選択したのは、第一に導入実績が豊富で世の中で利用されているクラウドサービスとして先行していたこと、第二に提供されている機能も豊富だったことが理由です。また、基幹システム移行後に運用管理補助を委託する全てのベンダーが対応可能なクラウドはAWSのみでした。こうしたことを勘案してAWSを選択しました」(高橋氏)

名古屋市は2023年9月、ガバメントクラウドへの接続回線を調達するための入札を実施した。提示した要件は3つで、1つ目が拠点接続サービスの提供、2つ目がクラウド接続サービスの提供、3つ目がクラウド内ネットワークの初期設定作業だ。
「1つ目と2つ目が回線調達に関係しており、1つ目については2つの庁舎から2本ずつ10Gbpsの専用線を導入し、東京と大阪のAWS接続拠点に接続するものです。10Gbpsという非常にリッチな回線でかつ四重化という構成は、稼働率99.99%という要件を満たすために必要でした。2つ目は、東京と大阪のAWS接続拠点とAWSの東京リージョン、大阪リージョン間をそれぞれAWS Direct Connectを利用して接続するものです。さらに今回のプロジェクトでは、これらの調達に加えて時間的な制約がありました」(高橋氏)
政府が定めた2025年度末までにガバメントクラウドへの移行を完了させるには2024年1月に初めての移行対象である税務総合情報システムの移行に着手する必要があるが、それに合わせて2023年12月末までに接続回線が構築されていなければならない。残された時間は3か月だった。
「適正コストに加えて、このスケジュールを厳守できるITパートナーが、TOKAIコミュニケーションズだったのです」(高橋氏)

選定ポイント

コストの優位性と短納期構築を実現する技術力

公共機関が実施する入札においては、やはり価格が落札の条件になる。TOKAIコミュニケーションズの入札価格に優位性があったことはもちろんだが、高橋氏は「その価格を提示することができたのは、TOKAIコミュニケーションズのネットワークに対する豊富な知見があったからだと思います」と強調する。
「地方公共団体には、利用するネットワークのセキュリティ強化を図るために、政府からネットワークの“三層分離”が求められています。具体的にはマイナンバー利用事務系、LGWAN接続系、インターネット接続系の各ネットワークを分離、独立させることでセキュリティを確保するというもので、政府からはクラウド上のルーティングで制御する具体例も提示されています。しかし名古屋市は庁内ネットワークの環境もあり、そのモデルを適用することができませんでした。だからといって三層に接続するネットワークをそのまま四重化しようとすれば、物理的に12本の回線を新設する必要があり、それだけコストが膨大になってしまいます。TOKAIコミュニケーションズは、1本の回線をあたかも12回線のような四重化ネットワークかつ、三層分離を4回線で高い稼働率を確保できるよう設計し、それを一番安い価格を提示することができたのは、まさに高い技術力があったからこそだと思います」(高橋氏)
またTOKAIコミュニケーションズは、3か月という構築期間も厳守した。
「時間もない中、とにかくガバメントクラウドに接続することが最優先だったので、まずは100Mbpsでもいいから期限までになんとか接続回線を用意してほしいと伝えていました。結果として、当初の要件通り10Gbpsで稼働率99.99%のガバメントクラウド接続回線を構築することができました」(高橋氏)

今後の展望

プロジェクトは円滑に進行 複数事業者との調整力も評価

ガバメントクラウドへの移行第一弾となった税務総合情報システムは、2024年4月から稼働を開始した。今後名古屋市は、2026年3月末を期限に他の基幹システムもガバメントクラウドへ順次移行していく予定だ。今回のプロジェクトを通して実感したTOKAIコミュニケーションズのその他のスキルとして、髙島氏は複数事業者との調整力を挙げる。
「今回のプロジェクトでは、私たちに加えて、AWS接続拠点となるデータセンターを提供する事業者など、複数の関係者とやり取りする必要がありました。TOKAIコミュニケーションズは、あらかじめプロジェクト計画書を作成して各々の役割分担や対応事項を明確にした上で、全体のマネジメントをしっかりしてくれました。そのおかげでプロジェクトを円滑に進めることができたと思います」(髙島氏)
「ガバメントクラウドを利用するためには、私たちのように庁舎とクラウド接続拠点、クラウド接続拠点とガバメントクラウドを接続する回線が必要になります。しかし多くの地方公共団体様がこの点を見落としているのではないかと心配しています。ネットワーク全体を見渡して最適な構成を提案してくれるITベンダーの協力は必要不可欠です。私たちの案件は入札が基本ですが、今後もTOKAIコミュニケーションズは参画していただき、より最適な提案していただくことを期待しています」(高橋氏)

ネットワーク構成図
  • 本導入事例の内容は制作時(2024年8月)のものであり、変更されている可能性があることをご了承ください。
  • その他記載されている会社名、製品名、サービス名、ロゴ等は各社の商標または登録商標です。

Company Profile

名古屋市役所

市制施行
1889年10月
所在地
愛知県名古屋市
事業内容
名古屋市における行政サービス
URL
https://www.city.nagoya.jp/ 新規ウィンドウで開く
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