
導入効果
- ハンズオン/定例会を通してAWS環境構築やネットワーク設定などの知見を獲得
- 自社だけでAWSサービスを組み合わせた新たなシステムの構築を実現
- 将来的な基幹システム移行も見据えた検証を経て今後の課題が明確に
導入背景
1971年創業の名鉄協商は、中部・関東・関西を拠点に、パーキング事業、各種商品販売からカーリースやカーシェアリングなどのモビリティ事業、不動産賃貸事業、IT開発まで多岐にわたる事業を展開している。IT開発においては、データや生成AIの活用に留意しスピーディで正確なシステム開発/運用/提案を実施しており、2019年にデータセンターのオンプレミス環境で稼働させている仮想サーバーをアマゾン ウェブ サービス(AWS)に移行することを計画。移行プロジェクトは自社主導で行い、AWS環境の構築などに関する知見を社内に蓄積していくことも大きな目的として設定した。その際に内製化支援を仰ぐITパートナー企業として選択したのが、AWSプレミアティアサービスパートナーのTOKAIコミュニケーションズだ。

IT統括 デジタルマーケティング室長
兼運用管理室長
小林道子氏

IT統括 デジタルマーケティング室
デジタルマーケティング担当 マネージャー(係長)
九嶋昌樹氏

IT統括 デジタルマーケティング室 主任
大石梨紗氏
課題
レンタルサーバーをAWSに移行したい
名鉄協商では、2019年の後半にレンタルサーバーをクラウド環境に移行することを計画した。対象はカーシェアサービス「カリテコ」のWebサーバー1台である。その理由についてIT統括 デジタルマーケティング室長兼運用管理室長の小林道子氏は次のように説明する。
「やはり開発/運用時の“気軽さ”が挙げられます。オンプレミス環境の場合、仮想サーバーの基盤である物理サーバーのスペックが不足した際には、スペック決定から決裁、調達、環境構築が必要でかなりの工数がかかります。一方クラウドなら、必要になった時にその場ですぐに希望するスペックのサーバーを入手できます。この気軽さが大きな魅力でした」(小林氏)
また移行先のクラウドサービスにAWSを選択した理由として小林氏はいくつかのポイントを挙げる。
「第一に市場シェアが大きいこと、第二に他のクラウドベンダーと比べてサポートが手厚いと感じたことです。当時、社内で既に利用していたクラウドサービスがありましたが、AWSの営業担当の方が非常に熱心だったことや、AWS関連の情報はWeb上でも数多く提供されていることからAWSが最適だと判断しました」(小林氏)
ただし、同社にとってAWSの環境構築と移行は初めての取り組みであるため、AWSの知見を蓄積していくことも目的の1つに掲げていた。同社に伴走し、適切なアドバイスと支援を仰ぐことのできるITパートナー企業が必要だった。
「AWSの営業担当の方にも相談していました。そして2020年4月に紹介いただいたのが、AWSプレミアティアサービスパートナーのTOKAIコミュニケーションズでした」(小林氏)
解決策
ハンズオンを通して環境構築と移行を実施
AWSからの紹介を受けた名鉄協商は、2020年8月にTOKAIコミュニケーションズの提供する内製化支援サービスを導入した。内製化支援サービスは、座学やハンズオン、定例会などを通して顧客企業の社内スタッフのスキル開発を支援するサービスである。名鉄協商は2回のハンズオンを通してAWS環境の構築と移行を実現することを目指した。プロジェクトに参加したのは、Webシステムを担当するデジタルマーケティング室のメンバーを中心とした6~7名だった。
ハンズオンの前段階として、今回構築を計画しているAWS環境の構成図をTOKAIコミュニケーションズが作成し、名鉄協商とイメージのすり合わせを行った上で構成図に沿って実際のハンズオンを進めた。
ハンズオンに参加したIT統括 デジタルマーケティング室 デジタルマーケティング担当 マネージャー(係長)の九嶋昌樹氏はその成果を次のように振り返る。
「Webサーバーの移行テストをハンズオン形式で行っていただいたことで、実際の作業イメージを持った上で本番の移行作業に取り組むことができました。自分一人で本を読んだり、Web上で情報を探したりしながら作業を進めた場合と比べて理解度も深まり、作業スピードもかなり速かったと思います」(九嶋氏)
また九嶋氏は、ハンズオン終了後に疑問点や不明点が出てきた時のTOKAIコミュニケーションズの対応についても次のように評価する。
「何か分からないことが出てきた時には基本的にチャットツールで問い合わせを行うのですが、サポート担当の方からは非常に早く回答をいただいています。仮にその場ですぐに分からない時でも、確認後にきちんと返事をくれます。さらには、支援期間終了後もTOKAIコミュニケーションズからいろいろな他社事例を聞くことができる点も大きなメリットの1つですね」(九嶋氏)
導入効果
基幹システム移行のための内製化支援も改めて依頼
仮想サーバー 1台のAWS移行を完了した名鉄協商は、2年後の2022年11月に、今度は基幹システムが稼働するオンプレミス環境の仮想サーバー 70台をAWSへ移行するための検証に着手した。
「今回は基幹システムが対象なので、考えなければならない要素は多岐にわたりました。そこで改めて内製化支援サービスを利用することにしました。この時には前回のハンズオンで実施していないことを3か月間で学びました。具体的には、ネットワークをつなぐための設定をどうするか、データベースのサービスを立ち上げるにはどうすればいいか、またWAFなどセキュリティ強化のための仕組みをどう盛り込むかといったことです」(小林氏)
2回目の内製化支援は定例会形式で実施した。定例会の中で質疑応答やハンズオンを実施し、名鉄協商とTOKAIコミュニケーションズが一緒になって基幹システムのAWS移行を検討していくという形だ。定例会の中で出てきた疑問点や不明点は、チャットツールでコミュニケーションを取る。この時も前回と同じメンバーも含めて6~7名が参加した。
「内製化支援サービスを通して、基幹システムをAWSに移行するための知見を獲得することができました。その一方、当時の基幹システムをそのままAWSに移行するにはコストがかかり過ぎるという検証結果も得ることができました。移行コストを抑えるためには、それ以前に取り組まなければならない課題があることが分かったのです」(小林氏)
その課題とは肥大化したデータベースを整理すること、全社共通の与信システムなど既存システムのクラウド対応を進めることである。
「社内調整もあるため、これらの取り組みを一朝一夕に進めることは困難です。ただこのうちデータベースのスリム化は、バックアップ方法やコストも問題もあり喫緊の課題です。現在は肥大化したデータベースの整理から取り組んでいます」(小林氏)
今後の展望
今後生成AIの活用を検討
関連する知見の共有に期待
2回の内製化支援サービスを経験した名鉄協商では、ハンズオン参加者自身のスキルアップに加えて社内でのスキルトランスファーも進んでいるという。
九嶋氏は、販促用の静的サイトをクラウドストレージサービスのAmazon S3に移行し、EメールプラットフォームのAmazon SES、サーバーレスコンピューティングサービスのAWS Lambda、さらにはセキュリティ対策としてのAWS WAFを組み合わせることで、ユーザからの問い合わせメールに対応するための仕組みを構築した。ハンズオンで学んだ知識をベースに、その後九嶋氏が自身で獲得した知識と合わせて完成させたものである。
また2回の内製化支援サービス導入後の2023年4月に入社したIT統括 デジタルマーケティング室 主任の大石梨紗氏は、受講メンバーからのスキルトランスファーについて次のように説明する。
「私はAWSに触れたことがなく、ゼロからのスタートでした。それで本を1冊読みましたが、実際の環境構築では分からないことも多々でてきました。その際には内製化支援サービスの受講メンバーに聞いて知見を深めてきました。今ではEC2サーバーの構築など環境構築に関わる一通りの作業は一人でできるようになりました」(大石氏)
今後同社は、生成AIを利用した商用アプリケーションの機能強化などに取り組んで行く予定だ。
「当社はOur Cardという名刺管理アプリを提供していますが、OCRの文字認識精度の向上に生成AIを利用できないかと考えています。この他にも生成AIは社内のFAQサイトに適用することも可能です。こうした場面でのお力添えもぜひTOKAIコミュニケーションズに期待したいですね」(小林氏)
「実際にTOKAIコミュニケーションズでは、AWSで生成AIアプリケーションを構築するための導入支援を行っていると伺いました。AIについては当社でも情報収集や導入検証を進めているところです。今後はそのような知見も共有していただきたいと思います」(九嶋氏)

- 本導入事例の内容は制作時(2025年2月)のものであり、変更されている可能性があることをご了承ください。
- その他記載されている会社名、製品名、サービス名、ロゴ等は各社の商標または登録商標です。
Company Profile
名鉄協商株式会社
- 設立
- 1971年2月
- 所在地
- 愛知県名古屋市
- 事業内容
- 商品販売・各種サービス(建設/ベンディング/オフィス 他)、パーキング事業、モビリティ事業(カーリース/カーシェアリング/シェアサイクル/保険)、不動産賃貸事業 他
- URL
- https://www.mkyosho.co.jp/
