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導入効果
- 各種AWSソリューションを採用してAWS上にIoTシステムを構築
- 状態監視保全業務を集中管理することで人手不足の解消に期待
- 機械学習を使用した継続的な機能向上を見据えた開発環境を獲得
導入背景
1907年の創業で1966年5月に創立されたダイハツディーゼルは、船舶用エンジンや陸用エンジンなどの開発・販売を通して、海と陸から人々の安心・安全な暮らしを支えている。2023年11月には、自社の目指す姿を表す中長期ビジョン「POWER! FOR ALL beyond 2030」を策定し、パワーサプライカンパニーとしてエンジンとサービスで顧客価値創造の実現を目指している。
同社は2022年秋、先行して開発した船舶用エンジンの異常診断システムに続き、IoTセンサーを利用する陸用ポンプエンジンの異常診断システムをアマゾン ウェブ サービス(AWS)上で新規開発することを計画した。その際にAWS環境の構築から実際のシステム開発、さらには分析結果を可視化するアプリケーションの開発までを委託するITパートナー企業として選択したのが、AWSパートナープログラムの最上位レベルであるAWSプレミアティアサービスパートナーのTOKAIコミュニケーションズだった。
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エンジニアリング事業部 陸用機関サービス部 主査
八木 規雄氏
課題
AWS上でIoTシステムを新規開発したい
ダイハツディーゼル株式会社は、2030年をターゲットに製品の温室効果ガス削減、事業活動での二酸化炭素削減、デジタルサポート事業の展開に取り組むことを掲げた。さらに20年後の2050年には、サービタイゼーションの進化とネットゼロエミッションを達成することを宣言している。この点について、エンジニアリング事業部 陸用機関サービス部 主査の八木規雄氏は、次のように説明する。
「サービタイゼーションは、生産した製品を販売するだけでなく製品に付随したサービスも一緒にお客様に提供するビジネスモデルです。製品販売が“モノ売り”だとすれば、サービタイゼーションは“コト売り”ですね。一方のネットゼロエミッションは、温室効果ガスや二酸化炭素の排出量から吸収量と除去量を差し引いた合計をゼロにするための取り組みです。私たちはこの2つの観点から、みなさまの暮らしを安心・安全に支えること、豊かな自然環境を守ることに取り組んでいます」
このうち、サービタイゼーションに関わる取り組みの1つが自社製品にIoTセンサーを設置して異常を検知するシステムの新規開発だ。今回対象としたのは陸用ポンプエンジンであり、このエンジンは雨水ポンプや河川揚排水ポンプ、下水処理場などの動力源として駆動している。
「当社は船舶用エンジンや陸用エンジンを開発・販売していますが、船舶用エンジンの異常診断システムについては以前に構築していました。そこで今回計画したのが陸用ポンプエンジンの異常診断システムの新規開発です。自社製品にIoTセンサーを取り付けて稼働データを収集・分析することで異常検知を行うためのシステムです。システム基盤としては船舶用エンジンの異常診断システムの開発と同様に、社内でのシステム構築実績も豊富にあったAWSを選択しました」
解決策
豊富な知見と対応力を評価しシステム開発全般を委託
陸用ポンプエンジンの異常診断システムを新規開発するにあたり、同社はプロジェクトを大きく3つのフェーズに分類した。1つ目が、自社製品にIoTセンサーを取り付け、さらにIoTセンサーからのデータを収集する装置を現場に設置するハードウェア対応フェーズ。2つ目が、AWS環境の構築も含めた異常診断システムの新規開発フェーズ。3つ目が、収集したIoTデータを分析して可視化するアプリケーションの開発フェーズである。1つ目のフェーズは、IoT機器を扱うハードウェアベンダーが行い、残り2つのフェーズをTOKAIコミュニケーションズが実施した。
「今回のプロジェクトの肝となる2つ目のフェーズでは、現場に設置したIoTデータの収集装置からデータをAWSに吸い上げ、AWS上に構築したシステムで投入したデータの変動幅から異常を検知する仕組みを構築します。このフェーズについては、複数のITベンダー様にお声がけしてお話をさせていただきました。その中から最終的に選択したのが、AWSからの紹介も受けていたTOKAIコミュニケーションズでした」
以前、別部署が船舶用エンジンの異常診断システムを開発した際にマンパワーが不足し、途中からプロジェクトに参画することをTOKAIコミュニケーションズに依頼したという経緯があった。
「その時の対応力やAWSに対する豊富な知見など、TOKAIコミュニケーションズに対する評価も聞いていました。今回私も直接やり取りさせていただいたことで、改めて社内の評価が正しかったことを実感することができました」
その顕著な例として八木氏が挙げるのが、実現したいことを10枚程度のラフスケッチに整理して渡した後の、各ベンダーからのアウトプットだったという。
「まず、実現したい画面イメージの概略図を描いて各社に共有しました。TOKAIコミュニケーションズは、既存パッケージを単に組み合わせた画面構成ではなく、AWS上のスクラッチ開発を前提として、提示したイメージを基にさらにブラッシュアップした画面案を提示してくれました」
八木氏は一連のやり取りを通じて、TOKAIコミュニケーションズの高い理解力と対応力、AWSに対する深い知見を知ることができたと強調する。
「そこで3つ目のフェーズ、収集したIoTデータを分析して可視化するアプリケーションの開発も併せて、TOKAIコミュニケーションズにお任せすることに決めました」
導入効果
サーバーレス開発を支援するAWSソリューションを採用
今回同社がAWS上で構築した陸用ポンプエンジンの異常診断システムには、多様なAWSソリューションが活用されている。代表的なものとして挙げられるのが、AWS上でサーバーレスコンピューティングを実現するAWS Lambdaである。
AWS Lambdaを利用することで、ユーザ企業はイベント発生時に実行コードを作成し、例えばコンテナイメージとしてアップロードするだけで、アプリケーションの機能単位でデプロイを行うことが可能となる。サーバーコストの低減に加え、サーバー構築や運用保守の手間も不要になる。
さらにAWS Lambdaは、コードを実行した時間と回数によって課金される料金体系となっている。定期的にイベントが発生するわけではない異常検知システムの基盤としては最適な仕組みだと言える。AWS Lambdaは、同社が先に開発した船舶用エンジンの異常診断システムでも利用されている。
また今回の仕組みでは、フルマネージド型のコンテナオーケストレーションサービスであるAmazon ECSも採用されている。コンテナ化されたアプリケーションを効率的にデプロイ/管理/スケールするためのソリューションである。
「起点となるIoTセンサーから吸い上げたデータをAWSサービスと連携するソリューションとしては、AWS IoT Coreを採用しています。こうした多様なAWSソリューションを効果的に組み合わせた構成にすることができたのも、最上位のAWSプレミアティアサービスパートナーであるTOKAIコミュニケーションズの知見があってこそだと思います」
加えて同社は、迅速なアプリケーションの改修と展開を実現するために、CI/CD(継続的インテグレーション/継続的デリバリー)環境も構築している。採用したのは、AWS CodePipeline/AWS CodeCommit/AWS CodeDeployの各ソリューションで、船舶用エンジンの異常診断システムを構築した時からの取り組みである。
今後の展望
人手不足の解消に期待、機械学習で機能向上も目指す
同社が構築した陸用ポンプエンジンの異常診断システムは、2024年1月に検収を終え、陸用機器異常診断システム「DD-LEAD」という名称で、商標登録も完了している。現在は顧客企業1社の協力を得て、納品した自社製品にIoTセンサーを設置させてもらい、稼働データを収集し、実際の稼働状況をトラッキングしている段階に移っている。近々、もう1社にも協力を仰ぎ、検証が完了次第、正式にシステムをリリースする予定だという。
「今回構築したDD-LEADを活用することで、IoTセンサーからの情報を基に異常に至る前の変化を検知することが可能となります。現在人手で行っている状態監視保全の業務を補完できるということで、人手不足の解消につながる効果として期待しています」
今後同社は、新たに製造・販売する製品には標準でIoTセンサーを搭載し、追加対応無しでDD-LEADを利用できる環境を整えていくことも検討している。
「これからも継続的にDD-LEADの機能を向上させていきたいと考えています。直近では機械学習を使って、異常値の範囲を自動設定する機能を搭載する予定です。今回のプロジェクトを通じて、TOKAIコミュニケーションズには、一をお伝えすれば十まで分かっていただけるという安心感と信頼感がありました。今後も引き続き、心強いご支援を期待しています」
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- 本導入事例の内容は制作時(2025年1月)のものであり、変更されている可能性があることをご了承ください。
- その他記載されている会社名、製品名、サービス名、ロゴ等は各社の商標または登録商標です。
Company Profile
ダイハツディーゼル株式会社
- 設立
- 1966年5月
- 所在地
- 大阪府大阪市
- 事業内容
- 船舶用エンジン/陸用エンジンなどの開発・販売 他
- URL
- https://www.dhtd.co.jp/
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