導入効果
- 16か所のストレージをAmazon FSx for ONTAPをはじめとするクラウド環境に集約
- 膨大な手間がかかっていた運用業務を大幅に削減
- 更新できていなかった運用管理手順の見直し作業にも着手
導入背景
1972年9月創立の中日本ハイウェイ・エンジニアリング東京株式会社は、道路保全に求められる高度な技術を持った技術者集団だ。NEXCO中日本グループの一員として、50年以上にわたり東名高速道路や中央自動車道の保全管理に努めている。
具体的には、高速道路の路面や橋梁、トンネルなどの土木構造物に加え、道路照明やトンネル内のジェットファンなど電気・通信施設・機械の点検、施工管理、品質管理、情報管理などの業務を行っている。
同社が行う点検業務では、実施した点検内容を正確に記録するために、現場の写真を撮影する必要がある。これまで、本社ではオンプレミスストレージ、15の事業所ではクラウドストレージとNASを利用していたが、高解像度化する点検画像データは毎年驚異的な勢いで増え続けており、運用の手間とコストの削減が課題となっていた。
そこで同社は、既存のストレージデータを新たなクラウドストレージに移行することを計画。その際に選択したサービスの1つが、TOKAIコミュニケーションズの提供するファイルサーバー導入サポートだ。
課題
運用に多くの課題を抱えていた従来のストレージ環境
同社の点検作業を担う15の事業所では、現場に赴く4~5名のスタッフが1現場当たり各々約100枚ずつ、合計で400~500枚以上の写真を撮影する。写真1枚のデータ容量は2~5MByteで、1つの現場での作業が終わるたびに、最大3GByteの画像データが追加される計算だ。利用するストレージ容量は、毎年驚異的な勢いで増加し続けていた。従来のストレージ環境の課題について、経営企画部 情報基盤整備課 課長の渡辺大典氏は、次のように説明する。
「例えば、トンネル内のジェットファンは約30年間も使い続けられる設備です。その間は点検作業を行う必要があり、撮影した画像データも長期間にわたって保存しておかなければなりません。ストレージコストは増加の一途を辿っており、さらに各事業所が利用していたアマゾン ウェブ サービス(AWS)上のクラウドストレージにも設定変更の手間がかかるなど運用業務にも多大な負荷が発生していました」(渡辺氏)
15の事業所では、データ保存用のストレージとして、バックアップ用途も含め2台のNASを利用していた。そして、容量不足の際には都度ハードディスクを追加するという対応を取っていた。しかしNASの運用は設定変更やバックアップに手間がかかり、追加分のハードウェアコストもかかっていた。そこで、本社に先駆けて事業所のNASをクラウド化することを決め、アマゾン ウェブ サービス(AWS)版の製品を提供しているストレージベンダーのクラウドストレージに集約することにした。しかし、このクラウドストレージもバージョンアップや容量の管理、設定変更などの手間がかかるものだった。
一方、本社で利用していたオンプレミス環境のストレージもいくつかの課題を抱えていた。この点について、経営企画部 情報基盤整備担当部長の丸山成人氏は、次のように説明する。
「やはり容量不足への対応が一番の課題ですね。基本的には3年分の業務データを保存しておくことにしていたのですが、急激に容量が増えるので、やむを得ず1年前のデータだけを残し消去するという事態も発生していました。当然運用時の手間もかかっていました」(丸山氏)
解決策
16か所のストレージ環境をクラウドに集約することを決定
各事業所のクラウドストレージの課題が見えてきた時、本社で利用していたオンプレミス環境のストレージが更新時期を迎えるタイミングだった。そこで同社はこれを機に、本社・各事業所の計16か所のストレージ環境を集約することを計画した。その際に選択したのが、導入実績が豊富なオンラインストレージサービスと、Amazon FSx for NetApp ONTAP(以下、Amazon FSx for ONTAP)だ。両サービスの選定ポイントについて、丸山氏は次のように続ける。
「オンラインストレージサービスは初めて利用するものでしたが、必要なコストはライセンス費用のみで、容量は無制限、インターネット経由でコラボレーションも容易という点が大きな魅力でした。しかしこのサービスは、多数のユーザが頻繁にアクセスして更新するデータベースの保存には適しませんでした。そこでこのオンラインストレージでは扱うことができないデータの保存先として選択したのが 、Amazon FSx for ONTAPです」(丸山氏)
Amazon FSx for ONTAPはNetApp ONTAPストレージOSで作成されており、オンプレミスで使用しているものと同じ機能や使い勝手で、ハードウェアのプロビジョニングやパッチの適用、バックアップなどを支援するフルマネージド型のストレージサービスだ。ユーザ企業はインフラの管理が不要となり、同社が課題を抱えていた運用業務の負荷を大幅に削減してくれるサービスだと言える。
「Amazon FSx for ONTAPについては、TOKAIコミュニケーションズから紹介を受けました。ただ実際の導入を進めるためには、プロジェクトを支援していただくITパートナーも必要です。TOKAIコミュニケーションズ以外にも、独自にインターネットなどで調べて複数のベンダーを選定しました。そして最終的に選んだのが、TOKAIコミュニケーションズでした」(渡辺氏)
導入効果
適正なコストと対応力、短期間での導入を高く評価
同社は、TOKAIコミュニケーションズを含む各社に16か所のストレージ環境をオンラインストレージサービスとAmazon FSx for ONTAPに移行・集約したいという要件を伝えた。その中で対応が可能であると回答が返ってきたのがTOKAIコミュニケーションズを含めて3社だったという。
「私たちの希望する納期が年度末で、スケジュール的にもかなり厳しいタイミングでした。そのためほとんどのベンダーからリソースが足りないという報告を受けました。その中でTOKAIコミュニケーションズを含め数社が対応可能と言ってくれましたが、具体的な計画や構成案だけでなく、コスト面でも、私たちの希望に沿う金額で対応いただき、本当に助かりましたね」(渡辺氏)
Amazon FSx for ONTAPの導入プロジェクトは2023年11月にスタートし、2024年3月に完了した。また本社のオンプレミスストレージと15事業所のクラウドストレージのデータ移行にあたっては、AWS上に移行作業用のAmazon EC2を10台構築した。そしてAmazon EC2からオンラインストレージサービスと、Amazon FSx for ONTAPの各々に同時並行的にデータを移行するという形だ。移行したデータ総量は、60~80TByteにのぼる。さらに今回、同社は今まで別のITベンダー経由で利用していたAWSアカウントも、TOKAIコミュニケーションズ経由に切り替えた。加えてSE保守チームによるAWS問い合わせサポート・保守サービスも採用している。
「今回はAmazon FSx for ONTAPの構築だけでなく、データ移行作業用の環境としてAmazon EC2も10台、用意していただきました。当初の想定では5台で足りる見込みだったのですが、追加で5台必要になり、さらにスケジュールも1週間という非常にタイトな状況だったのですが、TOKAIコミュニケーションズは最後まで、真摯に対応してくれました」(渡辺氏)
またAmazon FSx for ONTAPの利用開始に伴うAWSアカウントの作成など、初期設定に関わった経営企画部 情報基盤整備課の荻野亜紀穂氏は、TOKAIコミュニケーションズの対応を次のように評価する。
「今回のプロジェクトは年度末の決算期で、かなり忙しい時期でした。業務的にかなりバタバタしていて、TOKAIコミュニケーションズへの依頼も緊急だったのですが、引き受けていただき予定通りに完了しました。安心してお願いのできるITパートナーだと感じています」(荻野氏)
今後の展望
社内のAWS環境の統合を検討、豊富な知見と柔軟な提案に期待
Amazon FSx for ONTAPのカットオーバーから現時点で約4か月が経過している。利用ユーザ数は全従業員約1,200名と協力会社約800名の合計約2,000名だ。これまでに実感しているAmazon FSx for ONTAPの導入効果について、渡辺氏は次のように強調する。
「運用業務は非常に楽になりましたね。例えばアクセス権の設定も右クリックから簡単な操作をするだけです。また運用が楽になったおかげで、これまでなかなか更新できていなかった運用管理手順の見直し作業にも着手できました」(渡辺氏)
今後、経営企画部では、社内の他部署が各々で利用しているAWS環境も順次、可能な範囲で同部のAWS環境に集約していきたい考えだ。
「AWS以外のIaaS環境も含め、今回構築した環境に社内のAWS環境をまとめることができれば、コストメリットを出しつつ、統一したセキュリティポリシーで運用していくことが可能となります。社内での調整が必要で、現実的にはかなり遠い道のりですが、AWS環境を統合することができれば、運用業務を大幅に合理化することができます。今後も引き続き、TOKAIコミュニケーションズのAWSに対する豊富な知見と柔軟な提案に期待しています」(丸山氏)
- 本導入事例の内容は制作時(2024年12月)のものであり、変更されている可能性があることをご了承ください。
- その他記載されている会社名、製品名、サービス名、ロゴ等は各社の商標または登録商標です。
Company Profile
中日本ハイウェイ・エンジニアリング東京株式会社
- 創立
- 1972年9月
- 所在地
- 東京都新宿区
- 事業内容
- 保全管理(土木・施設)、コンサルティング・調査・分析事業、点検製品・データ提供システムの開発事業
- URL
- https://www.c-nexco-het.jp/