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AWSの運用を続けるにつれて、利用するサービスが増えて設定が複雑化しているお悩みはないでしょうか。システム規模が大きくなるほど、管理が行き届かず無駄なリソースを消費し、余計なコストが発生してしまいます。「AWS Trusted Advisor」は、こうした課題を解決し、システムの最適化をサポートしてくれるサービスです。AWS Trusted Advisorを活用すれば、不要なリソースを可視化し、コスト削減やセキュリティー強化にもつなげられます。そこで今回の記事では、AWS Trusted Advisorのサービス概要や、AWS Trusted Advisorが関係するAWSサポートについて解説します。
目次
AWS Trusted Advisorの概要と料金
まずは、AWS Trusted Advisorの概要と料金についてご紹介します。
AWS Trusted Advisorとは
AWS Trusted Advisorは、利用しているAWSのサービス群に対して、AWSのベストプラクティスに基づいて分析し、改善点を提示してくれる診断サービスです。コストやパフォーマンス、セキュリティーなどの6つの観点で分析します。AWSサポートが提供している機能のひとつで、契約しているAWSサポートのプランによってチェックできる観点が異なります。
AWS Trusted Advisorの料金
AWS Trusted Advisorは、AWSが提供しているサポートプラン「AWSサポート」の一部であり、AWS Trusted Advisor単体での料金は発生しません。ただし、AWSサポートには料金設定があり、AWS Trusted Advisorのすべての機能を利用するためには、有料のプランに加入している必要があります(詳細は後述)。
AWS Trusted Advisorを含む「AWSサポート」
AWSサポートとは、Webやチャットなどでの問い合わせや、Q&Aサイトの利用といったサポートを受けられるサービスです。AWS Trusted Advisorでチェックできる項目は、契約しているAWSサポートプランの内容によって異なります。
AWSサポートの5つのプラン
AWSサポートには、5つのプランが用意されています。ベーシックのみ無料で、その他は有料となっており、料金に応じてサポート内容が変化します。それぞれの主なサポート内容を簡単にご紹介します。
- ※ 2025年1月時点での情報です。
- ベーシック:
- サポートフォーラムの利用、AWSサービス状態のチェックなど
AWS契約時に自動で加入される無料のプラン - デベロッパー:
- サポート窓口へメール問い合わせ、システム障害の12時間以内の対応など
最低請求額は29.00 USD - ビジネス:
- デベロッパーのサポート内容に加え、年中無休の問い合わせ、システム障害の4時間以内の応答など
最低請求額は100.00 USD - エンタープライズ On-Ramp:
- ビジネスのサポート内容に加え、システムダウンの30分以内の対応など
最低請求額は5,500.00 USD - エンタープライズ:
- エンタープライズOn-Rampのサポート内容に加え、システムダウンの15分以内の応答など
最低請求額は15,000.00 USD
なお、料金については、月額のAWS使用料に応じて変動します。各プランのより詳細な内容について知りたい方は、下記記事をご参照ください。
AWSサポートプランの種類(無料・有料)と確認しておきたいポイント
AWS Trusted Advisorが使えるプラン
AWS Trusted Advisorの主要な機能は、ビジネスプラン以上で利用可能です。ベーシックプランとデベロッパープランでは、セキュリティーカテゴリーの一部とサービス制限に関するチェックのみ利用できます。
AWS Trusted Advisorでチェックできる6つのカテゴリー
AWS Trusted Advisorでは、下記6つのカテゴリーをチェックできます。
- セキュリティー
- サービス制限(クォーター)
- コスト最適化
- パフォーマンス
- 耐障害性
- 運用上の優秀性
ここからは、6つの各カテゴリーについて、具体的にどういった点をチェックしてくれるのか紹介していきます。
セキュリティー
AWSのセキュリティー関連機能が有効化されているかどうか、アクセスキーが流出していないかなど、セキュリティーに関するチェックを行います。
〈チェックの例〉
- Amazon RDS ストレージの暗号化がオフになっている
- Amazon S3 バケット許可
- Amazon IAM のパスワードポリシー
など
- ※ 一部の項目は、AWSサポートのベーシックプラン、デベロッパープランでもチェック可能です。
サービス制限(クォーター)
AWSアカウントが作成できるストレージやロールなどのリソースの最大数を監視し、80%を超えた場合にはアラートを発出します。
〈チェックの例〉
- Amazon EBS Cold HDD (sc1) ボリュームストレージの使用状況
- Amazon EC2 オンデマンドインスタンスの使用状況
- Amazon RDS DB インスタンスの使用状況
など
- ※ 一部の項目は、AWSサポートのベーシックプラン、デベロッパープランでもチェック可能です。
コスト最適化
サービスや設定の使用状態をチェックし、活用されていないサービスを洗い出してコスト最適化の提案をします。
〈チェックの例〉
- Amazon EC2 リザーブドインスタンスの最適化
- AWS Lambda 過剰なタイムアウトがある関数
- 使用率の低い Amazon Redshift クラスター
など
パフォーマンス
AWSリソースのパフォーマンス向上のため、スループットや有効化すべき設定をチェックします。
〈チェックの例〉
- Amazon EC2からEBSスループットの最適化
- Amazon RDS DB メモリパラメーターがデフォルトと乖離している
- Amazon CloudFront コンテンツ配信の最適化
など
耐障害性
AWSリソースの耐障害性、ひいては可用性や信頼性を向上させるため、オートスケーリングやヘルスチェック、その他有効/無効にすべき設定をチェックします。
〈チェックの例〉
- AWS Backup プランに含まれていない Amazon EBS
- Amazon EC2 詳細モニタリングが有効になっていない
- Auto Scaling Group ヘルスチェック
など
運用上の優秀性
AWS上のサービスが安定して稼働していること、問題発生時に迅速な対応を行える状態であることを確認します。
〈チェックの例〉
- Amazon API Gateway の実行ログのログ記録がない
- Amazon CloudFront アクセスログの設定
- AWS CloudTrail 証跡が Amazon CloudWatch Logs で設定されていない
など
他のAWS診断サービスとの違い
ここまで紹介してきた通り、AWS Trusted Advisorはシステムの最適化をサポートしてくれる診断サービスですが、AWSは他にもさまざまな診断サービスを提供しています。ここからは、他の診断サービスとAWS Trusted Advisorとの違いについて解説していきます。各サービスは目的が異なるため、違いを正しく理解したうえで、組み合わせて活用することが重要です。
AWS Security Hubとの違い
AWS Security Hubは、AWSリソースのセキュリティー設定が、AWSのベストプラクティスに準拠しているかどうかを、自動でチェックしてくれるサービスです。セキュリティーに特化している点が特徴で、AWSサポートに組み込まれているサービスではなく、単体で料金が発生する点もAWS Trusted Advisorとは異なります。
Amazon Inspectorとの違い
Amazon Inspectorは、Amazon EC2やAmazon ECRの脆弱性を検知するサービスです。スケジュール設定などは不要で、自動かつ継続的にリソースをスキャンします。AWS Trusted Advisorとの違いは、Amazon Inspectorがセキュリティーの中でも脆弱性対策に特化している点や、使用した分だけ料金が発生する仕組みである点です。
AWS Well-Architected Toolとの違い
AWS Well-Architected Toolは、AWS環境が「Well-Architected Framework」というフレームワークに準拠しているかどうかをチェックできるサービスです。「Well-Architected Framework」とはAWSが提供している、AWSのベストプラクティスを体系化したフレームワークです。
AWS Well-Architected ToolとAWS Trusted Advisorは補完関係にあり、お互いのチェックカテゴリーが対応しています。AWS Well-Architected Toolは環境全体のチェック、AWS Trusted Advisorは具体的な内容のチェックを行う、と考えるとわかりやすいでしょう。
まとめ
AWS Trusted Advisorは、コストの最適化やセキュリティーのチェックなどを行ってくれる診断サービスです。利用するサービスが増えれば増えるほど、AWSの設定は複雑になり、意図しない設定によって無駄なリソースを消費してしまうケースも珍しくありません。AWS Trusted Advisorを使えば、間違った設定や不要なサービスなどを簡単に見つけることができます。ただ、契約しているAWSサポートプランによっては、利用できる機能に制限があるため、注意が必要です。環境のチェックを行う他のAWS診断サービスともうまく組み合わせて活用していきましょう。
なお、TOKAIコミュニケーションズでは、AWS導入・移行やAWSの運用をサポートするサービスを提供しています。AWS導入を検討している方やAWS上に構築しているシステムの料金が気になる方は、お気軽に当社までご相談 ください。実績豊富な当社がお客様に合った最適なプランを提案いたします。
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