最終更新日:2025.01.15

生成AIアシスタントサービス「Amazon Q」とは? ユースケースや実際の活用事例を紹介

急速な進化を遂げている生成AI。近年では、さまざまな分野において活用が進められています。Amazonも生成AIに関するサービスを提供しており、そのひとつが企業向けの「Amazon Q」です。Amazon Qを導入すれば、社内に蓄積されたノウハウや事例などのデータを管理・有効活用でき、業務の効率化を図ることができます。この記事では、Amazon Qのサービスの種類や具体的な活用方法について解説します。

Amazon Qとは

Amazon Qとは、生成AIを活用したフルマネージド型のAIアシスタントサービスです。主な用途としては、データ分析やソフトウェア開発などが挙げられます。具体的には、ユーザーからの質問に対して、企業の内部データに基づいて回答したり、コンテンツを生成したりといった使い方ができます。

Amazon Qは企業向けの生成AIであり、データへのアクセス許可など企業が運用するのに適したセキュリティ機能があることも特長のひとつです。Amazon QがAWS上のリソースにアクセスする際、利用者に適切なAWS IAMの権限が付与されていなければ、そのリソースにアクセスできない仕組みとなっています。

また、無料の生成AIであれば多くの場合、質問や読み込ませたデータが学習対象となるため、企業の機密情報が漏えいする恐れが指摘されています。一方、Amazon Qは、入力された情報を生成AIモデルの改善に利用することはありません。Amazon Qについて紹介しているAWSの公式ページでは、以下のように明言されています。

"AWSは、基盤となるモデルのトレーニングにAmazon Qのお客様のコンテンツを使用することはありません。 つまり、会社の情報は安全かつプライベートに保たれます。"

参照元:生成系 AI を活用した新しいアシスタント、Amazon Q のご紹介 (プレビュー) | Amazon Web Services ブログ 新規ウィンドウで開く

Amazon Qの製品

Amazon Qは用途ごとに種類が分かれており、現時点では下記の製品があります。

  • Amazon Q Business
  • Amazon Q Developer

またAmazonの下記サービスでもAmazon Qが利用できます。

  • Amazon QuickSight:「Amazon Q in QuickSight」
  • Amazon Connect:「Amazon Q in Connect」
  • AWS Supply Chain(今後リリース予定)

2025年1月時点の情報です

Amazon Q Business

Amazon Q Businessは、ビジネス全般で活用できる生成AIアシスタントサービスです。自然言語に対応しており、チャット形式で下記のような幅広い支援をしてくれます。

  • ユーザーからの質問に企業内のデータに基づいて回答する
  • 文章の要約をする
  • コンテンツを生成する
  • 一連のタスクを自動的に行う

また、Amazon Q Businessには、「Amazon Q Apps」という機能が備わっています。これは、Amazon Q Businessのアプリケーションの中から、目的に合致した生成AIアプリを簡単に作成できる機能です。

Amazon Q Business Proユーザーのみが利用できます

なお、Amazon Q Businessの日本語版は現状提供開始されておりません。

Amazon Q Developer

Amazon Q Developerは、開発者向けのAIアシスタントサービスです。コードの作成や改善の提案、プログラムのバージョンアップのためのコード変換、テストの実行およびデバッグ支援などをしてくれます。JetBrainsやVisual Studio、VS Codeなどの統合開発環境(IDE)に対応しており、いずれもプラグインとしてインストールすることで利用可能です。

Amazon QuickSightの「Amazon QuickSight Q」

「Amazon QuickSight」はAWSのBIツールです。さまざまなデータソースのデータを収集し、「ダッシュボード」と呼ばれる画面にグラフや分布図などをまとめて、データを可視化します。Amazon QuickSight Qは、自然言語を使ってダッシュボードの作成を行います。また、データに関する質問への回答や、データ分析結果の要約も可能です。

なお、2023年8月からはAmazon QuickSight QにAWSの生成AIサービス「Amazon Bedrock」のLLM(大規模言語モデル)を適用した「Generative BI」と呼ばれるサービスが登場し、利便性がさらに向上しました。

以下の記事では、Amazon QuickSightやBIについて、詳しく解説しています。興味のある方はあわせてご参照ください。

AWSで実現するデータ分析|AWSのBIツール「Amazon QuickSight」とは?

Amazon Connect の「Amazon Q in Connect」

「Amazon Connect」は、コンタクトセンター(カスタマーセンター)担当者の支援や、他サービスと連携して自動受付システムを構築できるサービスです。Amazon Q in Connectは、企業の情報を用いてリアルタイムに会話を分析し、適切な回答やアクションを提示します。これによりコンタクトセンターの担当者は、顧客の問い合わせに対して迅速に対応が可能です。

AWS Supply Chain

「AWS Supply Chain」は、AWSが提供するサプライチェーンの管理アプリケーションです。ERP(Enterprise Resource Planning:統合基幹業務システム)やSCM(Supply Chain Management:サプライチェーン管理システム)といったシステムに接続してさまざまなデータを変換し、需要予測や在庫の可視化、インサイトや需要計画・供給計画の提案などを行います。

AWS Supply ChainのAmazon Qは、AWS Supply Chainのデータレイクをもとに、「需要予測は?」「在庫の状況は?」といった自然言語での質問に対して回答するサービスとなる予定です。経営幹部や分析担当者など、それぞれのニーズに合わせて利用できます。

2025年1月時点でリリース時期は未定です。

Amazon Qのユースケース

続いて、Amazon Qのユースケースを3つご紹介します。

EC2インスタンス選定のサポート

1つ目は、インスタンス選定時のサポートです。EC2インスタンスタイプ(サーバーのタイプ)は、ファミリーや世代、追加機能という概念を有しており、近年では細分化が進んでいることから、適切なインスタンスを選択するのも簡単ではありません。Amazon Qに用途を明示して質問すれば、用途に適したインスタンスタイプを回答してくれるため、インスタンス選びで悩むことがなくなります。

ヘルプデスクのサポート

2つ目は、社内規定をAmazon Qに読み込ませておけば、社内ヘルプデスクの業務の一部をAmazon Qに任せることも可能です。たとえば社員から「交通費の経費申請の方法」について質問が挙がった際に、経路検索や申請に必要な情報など、読み込み済みの社内規定に基づいてAmazon Qに回答してもらうといった運用が実現できます。社内ヘルプデスクとしては、問い合わせ対応にかかる工数を削減でき、業務効率化につながります。

ナレッジマネジメントのサポート

3つ目は、Amazon Qは、企業内に蓄積された資料や社員が持つ知識を適切に管理して、経営に活かす「ナレッジマネジメント」にも活用できます。企業内の資料は月日が経つごとに増加するうえ、部門の変更や合併などもあるため管理が難しく、そのために貴重なデータを活用できないケースもあります。Amazon Qで企業内の営業資料やIT技術の資料などを収集すれば、ナレッジも共有しやすくなるでしょう。なお、Amazon Qでは権限の管理も行っているため、企業内において不適切なアクセスが発生する可能性も少なくなります。

Amazon Qの活用事例

続いて、Amazon Qの海外における活用事例を2つご紹介します。

Amazon Q Businessの活用事例:Deriv

「Deriv」は、世界最大規模の外国為替ブローカーとして有名な金融サービス企業です。Derivが提供している金融プラットフォームは、何百万人という規模の顧客が利用しており、従業員は業務のために膨大な量の業務資料やその他コンテンツを作成していました。しかし、それらはオンラインドライブからチャットツールに至るまで、さまざまな場所に散らばっており、有効活用できていないことを問題視していました。

そこでDerivは、Amazon Q Businessの活用を決意。カスタマーサポートやマーケティング、コンテンツ部門、採用部門など、さまざまな部署に分かれていた新入社員のトレーニングに関する資料をAmazon Q Businessに統合しました。これによって、新入社員は疑問点が生じた際にAmazon Qに質問することで以前よりも45%早く回答が得られるようになりました。その結果、新入社員が業務に慣れるまでに従来は1カ月ほど要していたのが、1週間ほどにまで短縮されたとのことです。

また、採用部門においても、一定の効果が見られたといいます。採用部門では、採用担当者が応募者の情報を確認する際、読んで評価するまで20分の時間を要していました。これに対し、Amazon Q Businessで応募者情報を要約するという方法を取り入れた結果、採用担当者の確認時間を50%短縮できました。

Amazon Q Developerの活用事例:Bolttech

bolttechは「組込型保険」を手掛ける、保険サービスの新興企業です。bolttechでは、新しいシステムの開発から市場に投入するまでに時間がかかっているため、開発サイクルを早めるべく、冗長で手間のかかる作業を開発サイクルから除くことを課題としていました。

この問題を解決するためにAmazon Q Developerを導入したところ、コードのドキュメント化や更新にかかる時間の75%短縮を実現。Python開発においては、従来時間がかかっていた「DocStrings」の生成が数秒で完了するようになり、90%の時間短縮を成し遂げました。コーディングに注力できる時間が増加した結果、コード品質や配信速度の向上にもつながったといいます。

Amazon Qの料金体系

最後に、Amazon Qの料金体系をご紹介します。Amazon Qは、Amazon Q BusinessとAmazon Q Developerによって料金が異なります。詳しくは、以下の通りです。

Amazon Q Businessの料金

Amazon Q Businessでは、サブスクリプション料金とインデックス料金の2種類の料金が発生します。

【サブスクリプション料金】

サブスクリプションには「Amazon Q Business Lite」と「Amazon Q Business Pro」があります。ProはLiteで使える機能に加えて、Amazon Q in QuickSightやAmazon Q Appsの活用ができるなど、使える機能が増えています。

  • Amazon Q Business Lite:3 USD/月
  • Amazon Q Business Pro:20 USD/月

いずれも1ユーザーあたり

【インデックス料金】

インデックスにはStarter IndexとEnterprise Indexがあります。Starter Indexはアベイラビリティゾーンが1つ、Enterprise Indexが3つとなっています。

  • Starter Index:1ユニット(※)ごとに0.140 USD/時間
  • Enterprise Index:1ユニット(※)ごとに0.264 USD/時間

1ユニット:1カ月あたり100時間分のコネクタの使用、20,000件のドキュメントまたは200 MBの抽出されたテキスト(いずれか早く達した方)

【無料トライアル】

Amazon Q Business LiteおよびProには、アプリケーションごとに最大50名のユーザーが利用できる、60日間の無料トライアル期間があります。

【料金例:5000人規模の会社でのBusiness利用 月額合計33,004 USD】

4,500名のユーザーがAmazon Q Business Lite、500名のユーザーがAmazon Q Business Proを購入したとします。Enterprise Indexでインデックスを作成するドキュメントが100万件の場合、月額料金は以下とおりです。

インデックス料金:
1時間あたり0.264 USD × 50ユニット × 24時間 × 30日 = 9,504 USD

ユーザーサブスクリプション:
4,500名のユーザー × 3 USD/ユーザー/月 = 13,500 USD
500名のユーザー × 20 USD/ユーザー/月 = 10,000 USD
合計ユーザーサブスクリプション:23,500 USD

合計月額料金:33,004 USD

Amazon Q Developerの料金

Amazon Q Developerは無料利用枠とAmazon Q Developer Proがあります。Proでは無料利用枠でできることに加え、提案の高度化などの機能が追加され、IDEでのチャットやアプリのアップグレードなど、高度な機能の制限が緩和されています。

  • Amazon Q Developer Pro:19 USD/月

1ユーザーあたり

【料金例:Developer Pro利用で50名のユーザーを追加 月額合計 950 USD】
Amazon Q Developer Proを契約しており、Amazon Q Developer Proサブスクリプションに50名のユーザーを追加する場合、50名のユーザー分にかかる料金は以下のとおりです。

19 USD × (31/31) 日間 × 50名のユーザー = 950 USD

合計料金: 950 USD

その他の料金

Amazon QuickSight、Amazon Connect、AWS Supply ChainのAmazon Qについては、Amazon Qではなくそれぞれのサービスに対して料金が発生します。詳しくはAWS公式ページをご覧ください。

まとめ

企業内の情報資産を有効活用する、ヘルプデスク業務の負担を緩和するなど、価値の創造や業務改善に利用できるAmazon Q。本記事でも紹介したように活用の仕方はさまざまで、うまく活用できれば業務の負担を大きく軽減してくれます。この機会にAmazon Qの導入を検討してみてはいかがでしょうか。

Amazon Qの導入についてお悩みの方は、TOKAIコミュニケーションズまでお気軽にご相談 新規ウィンドウで開くください。AWSの導入実績豊富な当社が、お客様のニーズに合った最適なプランを提案いたします。

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