Amazon AppStream2.0は任意のアプリケーションやデスクトップ画面を配信するサービスであり、リモートワーク環境としてもご利用いただけるサービスです。
今回は、リモートワーク環境を検討するうえでおさえておくべきAmazon AppStream2.0の特徴を、8つのポイントに分けてご紹介したいと思います。
目次
Amazon AppStream2.0とは
Amazon AppStream2.0とはフルマネージド型の非永続デスクトップ※1およびアプリケーション仮想化サービスで、端末がインターネットに接続されていれば時間や場所を問わず利用できます。デスクトップやアプリケーションの画面がNICE DCVプロトコルにより転送され、手元にある端末から閲覧することができる仕組みです。
- ※1 ユーザーセッションの終了時に何も保存されないデスクトップのことを指します。デスクトップ・設定・ショートカットに保存されているファイルは、セッションの終了時にすべて失われ、データはクラウド内にのみ残ります。
それでは、以下でAmazon AppStream2.0のポイントを紹介していきます。
ポイント1 ユースケースに応じた配信タイプを選択可能
Amazon AppStream2.0では、2つの配信タイプを用途に合わせて選択できます。
- ①
アプリケーション配信
特定の業務アプリケーションのみを配信したい場合に利用します。利用者には配信対象のアプリケーション画面のみが配信されるため、業務利用を制限したい場合などに最適です。 - ②
デスクトップ配信
利用者に仮想デスクトップ環境を提供したい場合に利用します。AWS上で稼働する仮想マシン上のデスクトップ画面を利用者に配信するため、柔軟な業務環境を提供することができます。
ポイント2 容易なイメージ管理で大量展開も可能
Amazon AppStream2.0は、配信したいアプリケーションやデスクトップ環境をイメージ化することで、用途に合った環境を配信することができます。
WindowsUpdateやアプリケーションの更新についても、マスターイメージを更新することで利用者は常に最新の状態の環境を利用できます。また、利用者数に応じて必要な数だけ配信できます。
ポイント3 端末を選ばない
Amazon AppStream2.0はHTML5対応のウェブブラウザで利用可能なため、PC端末やタブレットなど、ユーザーの利用端末を選ばずに利用できます。
〈Amazon AppStream2.0が利用できる端末一覧〉
- Windowsコンピュータ
- Macコンピュータ
- Linuxコンピュータ
- Chromebook
- iPad
- Fireタブレット
- Androidタブレット
- ※ Amazon AppStream2.0には専用クライアントアプリケーションが提供されており、Windowsコンピュータ(Windows7、8、10)でご利用いただけます。
ポイント4 オンプレミス環境と連携もできる
AWSとオンプレミス環境を接続することで、既存システムをそのまま利用できます。
たとえば、自社で使われているActive Directory(AD)と連携し、既存のドメインユーザーでAmazon AppStream2.0を利用できます。
また、グループポリシー等を利用して社内規定に合わせた設定にすることも可能です。
- ※ Amazon AppStream2.0でAD連携をする場合、SAML2.0のIDフェデレーションとの連携が必要です。
ポイント5 スモールスタートが可能
Amazon AppStream2.0は初期投資(初期費用)が不要です。
最低利用台数1台からはじめられ、利用者数や利用時間などに応じた従量課金となっています。
その他にも複数の要素に応じて利用料金が決まりますが、利用料金はAWSが公開している見積もり試算ツールを利用し試算することが可能です。
少し複雑な部分もあるため、利用料の試算だけでもお気軽に当社へご相談頂ければと思います。
〈Amazon AppStream2.0の利用料に関わる要素〉
- 総利用ユーザー数
- AWSリージョン
- インスタンスタイプとサイズ
- ライセンスモデル(商用 or アカデミック)
- バッファ容量の割合
- 時間あたりの同時使用ユーザー数
- 実行タイプ(常時接続 or オンデマンド)
実行タイプは常時稼働、オンデマンドの2種類のタイプが提供されており、用途に応じて選択できます。
項目 | 常時稼働(Always-On) | オンデマンド |
---|---|---|
稼働のタイミング | ユーザーがすぐにインスタンスを利用できるように、指定インスタンス数を常時稼働させておきます。 | 切断時はインスタンスを停止しておき、接続時にインスタンスを起動します。 |
接続の待ち時間 | ユーザーは待ち時間なしで即時フリートインスタンスに接続できます。 | ユーザーは接続時に1~2分の待ち時間が発生します。 |
課金のタイミング | 常時稼働のため、稼働インスタンス数分のストリーミング料金が発生します。 | 接続時のストリーミング料金と、スタンバイ時の少額な時間課金が発生します。 |
ポイント6 非永続型な利用環境
Amazon AppStream2.0では、非永続型のアプリケーション、デスクトップ環境が提供されます。
非永続型な環境とは、ユーザーの利用終了後に都度自動削除される環境を指します。ユーザーが再度ログインする際は前回と異なる新しいアプリケーション環境、デスクトップ環境が提供されるため、不要な業務データやユーザーデータが仮想環境に残ることはありません。
ポイント7 非永続でも一部データを永続化することも可能
Amazon AppStream2.0は非永続型の環境が特徴的ですが、一部のデータや情報をユーザー毎に永続的に保持させることができます。
このデータの保存場所は「ホームフォルダ」と呼ばれ、Amazon S3やGoogle Driveなどを利用し、ユーザーデータを永続的に保存することができます。ユーザーは、ストリーミングセッション中にこれらストレージにアクセス可能となります。AD連携により既存のファイルサーバなどをホームフォルダとして設定することも可能です。
また、アプリ設定やWindowsの設定をS3に保存することで、非永続環境でありながらこれらの設定を永続的に利用することができます。これを「ユーザー設定の永続化」と呼びます。
永続ができる主な設定は以下の通りです。
- ブラウザの設定、お気に入り
- アプリ接続プロファイル
- プラグイン
- UIカスタマイズ
ポイント8 配信方法
Amazon AppStream2.0はお客様の接続要件に応じてアプリケーション、デスクトップ配信の配信方法をプライベートネットワーク接続、インターネット接続から選択が可能です。
プライベート接続はオンプレミス-AWS間がセキュアに接続されたネットワーク接続を利用し、配信をプライベートネットワーク内に限定できます。
インターネット接続では、端末がインターネットに接続されていれば時間や場所を問わず利用できます。
Amazon WorkSpacesとの比較
AWSには、Amazon WorkSpacesという仮想デスクトップサービスが提供されています。
Amazon WorkSpaces、Amazon AppStream2.0どちらもリモートワーク環境としてご利用いただけるサービスですが、それぞれの特徴についての比較を次の表にまとめてみました。
項目 | Amazon WorkSpaces | Amazon AppStream2.0 |
---|---|---|
利用方式 | 永続性 | 非永続性 |
インスタンス割当 |
|
|
データの永続性 | ローカル(D)に永続的に保存。 | Amazon S3を利用しデータを永続的に保存可能な領域の作成も可。 |
提供対象 | デスクトップのみ。 | デスクトップ、及びアプリケーション。 |
課金 | 月額固定、または時間単位。 〈参考〉6,500円程度/台(MS-Office込み) |
同時接続数による時間課金
|
ディレクトリサービス | Active Directory | SAML2.0(IdpでAD連携可) |
ユースケース | ユーザー自らアプリのインストール、デスクトップのカスタマイズが必要な場合にオススメです。 | 定型業務(事務処理やCADなど用途が固定されている業務)、コンタクトセンター、トレーニング、学校などでの利用がオススメです。 |
大きな違いとして、Amazon WorkSpacesは永続型であるのに対し、AppStream2.0が非永続型のサービスとなっています。
そのためAppStream2.0は、アプリのインストール・仮想デスクトップ環境のカスタマイズが不要な定型業務などの利用に適していると言えます。
しかし、先述のポイントで示した通り、非永続型のサービスであるが一部データを永続化することが可能でもあり、お客様のユースケースに応じて最適なものをご選択頂ければと思います。
Amazon WorkSpacesについても別記事で特徴をまとめていますので、そちらもご参考頂ければと思います。
まとめ
今回は、フルマネージド型の非永続デスクトップおよびアプリケーション仮想化サービスであるAmazon AppStream2.0についてご紹介しました。Amazon AppStream2.0は非永続型の特性を活かした定型業務向けのご利用に適したサービスとなっていますが、一部データを永続化できることよりユースケースに応じた選択が必要であると思います。
当社ではAmazon WorkSpaces、Amazon AppStream2.0についても自信をもってご提案できますので、ご検討の際はぜひ当社にご相談 ください。
作成者:山本
関連サービス
おすすめ記事
-
2020.06.23
Amazon Connectで在宅勤務でも対応できる問合せ窓口を立ち上げてみた
-
2020.08.17
Datadogで実現するモニタリングとオペレーションのオートメーション化
-
2020.04.27
Amazon FSx for Windows ファイルサーバーへの移行と活用方法
-
2020.06.11
Amazon WorkSpacesとは?その特長をまとめてみた
-
2020.06.23
AWSのDevOpsサービスと当社マネージドサービスを活用したDevOpsの実装①~概念編~