最終更新日:2024.08.28

業界別AWS導入ガイド|金融業・小売業における成功事例を紹介!

近年では、さまざまな業界でAWSの活用が進んでいます。AWSは業界特有の課題やニーズに対応するために、次々と最新のクラウドサービスを提供しています。本記事では、「金融業」と「小売業」をピックアップし、この2つの業種におけるAWSの導入事例を4つご紹介します。これらの事例を通じて、セキュアな環境で基幹システムのクラウド化を実現した具体的な方法やコスト削減、業務負荷軽減の方法などを確認していきましょう。

金融業界におけるAWSの強み

まずは、金融業界におけるAWSの強みから解説していきます。

セキュリティ

金融業界でクラウド基盤を構築する際に最優先事項となるのが、「セキュリティ」と「ガバナンス」です。金融機関は、クレジットカード情報やローン・保険情報、口座情報など、極めて機密性の高い顧客情報や金融取引データを取り扱っています。これらの情報が漏えいしたり悪用されたりすると、企業や顧客だけでなく、社会全体に深刻な被害をもたらす可能性があります。情報漏えいや不正アクセスなどのリスクを最小限に抑えるために、セキュリティとガバナンスが最重視されるのです。

AWSは、こうした金融業界の厳しい要求に応えるために、高水準のセキュリティ対策を提供しています。それは、内閣総理大臣より認定された公益財団法人FISC(金融情報システムセンター)の「FISC安全対策基準」に準拠するガイドラインです。これは、AWSを利用する企業にとって大きな安心材料となるでしょう。

セキュアなクラウド環境を実現するためのAWSサービスとしては、次のようなものが挙げられます。

Amazon VPC(Amazon Virtual Private Cloud:ヴァーチャル・プライベート・クラウド)

AWS上で仮想ネットワーク(安全でプライベートなネットワーク)を構築できるサービス。

Amazon PrivateLink(プライベートリンク)

AWSとオンプレミス環境やAmazon VPC間を安全に接続できるサービス。

これらのサービスを活用することで、インターネットを介さずにシステムを接続し、障害に強い安全なネットワークを構築できます。

可用性

金融業界のシステム構築において、もう一つ欠かせない要素が「高い可用性」です。経済に密接に関わる決済や株価などのシステムが突然停止すると、大混乱と大損害を招く可能性があります。災害が起こってもシステムが継続して稼働し続けることは、金融システムにとって不可欠です。

その点、AWSはマルチリージョンやマルチAZ構成によって、簡単に可用性の高いシステムを構築できます。これは、AWSが持つ豊富なインフラやデータセンターの恩恵といえるでしょう。また、Amazon Auroraを使えば、常に利用可能なクラウド型データベースを構築でき、高い可用性を確保できます。

金融業界におけるAWSの導入事例

次に、実際にAWS導入を行った金融機関の事例を2つご紹介します。

住信SBIネット銀行

会社の概要

住信SBIネット銀行は、インターネット専業の銀行として、デジタル技術を駆使した先進的な金融サービスを提供しています。2012年からAWSの活用を開始し、データセンターを仮想化して集約。2017年には、AWS上への完全なクラウド移行を決定しました。

AWS選定の経緯

AWSを選定する際のポイントは、「俊敏性や柔軟性の確保」と「金融システムの高度なセキュリティとガバナンスを維持できるか」の2つだったといいます。AWSは、FISC安全対策基準に準拠し、セキュリティに関する情報や監査ポリシーをすべて外部に公開していたことから、信頼できると評価されました。また、新しいサービスが次々とリリースされる開発力や、エンジニアの確保の容易さも評価点の一つとなりました。

導入による効果

AWS導入後、システムインフラの構築期間が4カ月以上から約1カ月半に短縮でき、TCO(総保有コスト)は、平均40%の削減に成功しました。5年間でのTCO削減率は80%に達し、性能も1.5倍向上する見込みです。さらに、コンタクトセンターではAmazon Connectを導入し、クラウド型コールセンターを実現。これにより、スピーディーかつ低コストで月5万件のコール数に対応できるようになり、業務継続性が向上したとのことです。

クレディセゾン

会社の概要

クレディセゾンは、ペイメント事業やファイナンス事業、不動産事業などを展開する企業で、会員数は3,600万人に達します。DXの次なるステップとして、与信審査や債権回収などの中心業務を含む、約40の基幹周辺システムの更新・リニューアルに着手しました。

AWS選定の経緯

AWSを選定する決め手は、「金融機関での導入実績の豊富さ」とのことです。プロジェクト開始当時、AWSだけがFISC安全対策基準に適合していると判断でき、さらに「PCI DSS(日本カード情報セキュリティ協議会)」にも準拠していたことが、決定の要因となりました。

導入による効果

AWS導入後、年200万件の与信業務に関わる4つのシステムの移行に成功しました。すでに22のシステムがAWS上で稼働しており、残りの移行は2025年までに完了する予定だといいます。これにより、10年間で約38億円のコスト削減が見込まれています。また、Amazon Connectを活用したコールセンター・オペレーター業務の自動化も実現。自動架電や自動音声を使った入金催促システムを開発し、月20万件の架電が可能になっています。

なお、当社は金融業界におけるAWS導入も実績があります。当社の導入実績について興味のある方は以下のページからご確認ください。

AWS導入事例 株式会社ジャパンネット銀行様 | TOKAIコミュニケーションズ AWSソリューション 新規ウィンドウで開く

小売業界におけるAWSの強み

続いて、小売業界におけるAWSの強みを解説します。

人手不足の解消

日本では、少子高齢化に伴って人手不足問題が深刻化しています。パーソル総合研究所が中央大学と共同開発した予想モデルによると、2030年までに労働需要が7,073万人に対し、労働供給が6,429万人と見込まれ、約644万人もの人手不足が生じると予測されています。特に小売業界では、約60万人の人手不足が懸念されており、早急な対策が求められています。

このような人手不足の解消のため、「業務の効率化と自動化」の必要性が叫ばれており、その一環としてAWSに注目が集まっています。具体的には、Amazon Lexを用いたチャットボット導入やAmazon Connectを利用したクラウドベースのコールセンターの構築などが期待されています。

Amazon Lex(レックス)

会話型AIを用いたチャットボットなどを構築できるサービス。

Amazon Connect(コネクト)

あらゆる規模のクラウド型コールセンター(顧客窓口)を、低コストで構築できるサービス。

需要予測、消費行動の分析

小売業では、需要予測が極めて重要です。需要予測の精度が低いと、在庫不足や機会損失を招きます。在庫切れや機会損失は売上減少や顧客離れにつながります。一方で、在庫を持ちすぎると保管管理や廃棄にコストがかかってしまいます。このような事態を避けるため、適正な需要予測が求められているのです。

AWSが提供する高度な機械学習を備えたサービスを活用すれば、精度の高い需要予測が可能です。

Amazon Forecast(フォーキャスト)

機械学習の知識がなくても、簡単に需要予測ができるAIサービス。時系列でデータを分析し、商品の需要数や売上高などを高い精度で予測できる。

Amazon SageMaker(セージメーカー)

機械学習を手軽に行えるマネージドサービス。豊富なアルゴリズムやツールが提供されており、大規模なデータも扱える。

最近では、電子商取引(EC)による購買が一般化し、それに伴って消費者の行動も変化しています。この変化の中で、小売業界でも「データ分析」が注目されており、企業のECサイトなどでは、顧客の購買履歴や閲覧履歴など、大量のデータが蓄積されています。このデータを活用することで、顧客の購買傾向を分析したり、関連商品を提案したりすることが可能となり、マーケティング戦略や顧客対応の改善にも活用できるのです。そのため、小売業界では、データ分析の重要性が増しています。

また、データ分析の分野でも、AWSが多くの企業に活用されています。AWSには、データの保存から分析まで、さまざまなニーズに応える多彩なサービスが用意されています。

Amazon S3

データレイク基盤として活用できるサービス。可用性やスケーラビリティ、セキュリティ、監査機能などが備わっており、大規模なデータを効果的に管理できる。

Amazon Personalize(パーソナライズ)

AIが個々のユーザーの好みに合わせた最適な商品をレコメンドするサービス。

小売業界におけるAWSの導入事例

最後に、小売業界のリーディングカンパニーでもある2社のAWS導入事例をご紹介します。

セブン&アイグループ

会社の概要

セブン&アイ・ホールディングスは、セブン‐イレブンやイトーヨーカドーなどの多種多様な店舗展開で知られ、世界各国に小売グループとしてネットワークを有しています。同社はIT戦略に注力しており、顧客情報を電子マネー(nanaco)やECサイト(オムニ7)などを通じて積極的に蓄積してきました。しかし、それらの情報が断片的でデータの活用に課題を抱えていたため、CRM(顧客関係性マネジメント)戦略を推進する運びとなり、AWSの採用を決定しました。

AWS選定の経緯

決め手となったのは、予測困難な会員数の増加に対応できる高いスケーラビリティです。また、すでにアメリカのセブン‐イレブンで、AWS導入の成功事例があったことも、選定の理由になったといいます。

導入の効果

2018年6月にCRM基盤の構築が完了し、顧客ロイヤリティプログラム「セブンマイル」がスタート。Amazon S3やAmazon EC2、Amazon RedshiftなどのAWSサービスを活用したCRM基盤構築により、従来の電子マネー会員に比べて月平均購買金額が1,535円上昇し、購入回数も3.2回増加するなどの成果が上がりました。さらに、セブン‐イレブンとグループ会社の両方を利用する顧客の動きなど、グループ全体から俯瞰した顧客動向を把握できるようになり、それに基づいた効果的な施策(相互送客や離脱防止など)も打てるようになったといいます。

Amazon.com

会社の概要

世界最大級のオンラインショッピングサイトであるAmazonは、ECビジネス市場でもトップシェアを誇っており、日常品から嗜好品まであらゆる商品を扱っています。2023年のAmazon日本事業の売上高は、約3.6兆円に達しています。

AWS選定の経緯

Amazonが年間数億から数十億もの商品を出荷している中、商品の過剰梱包によるCO2排出量の問題が浮上しました。同社はこの課題に真剣に取り組んでおり、The Climate Pledgeに署名し「2025年までに自社事業を100%再生可能なエネルギーで行う」という目標を掲げています。この取り組みの一環として、自社のAmazon SageMakerを活用した機械学習ソリューションの構築を進めました。

導入の効果

Amazon SageMakerの導入により、商品に応じた最適な梱包が可能となりました。その結果、世界中で915,000トンもの梱包材を削減し、16億個以上の配送ボックスを節約することに成功。また、Amazon SageMakerを利用して数週間で新しい販売モデルを開発し、廃棄物を削減するソリューションを持続的に発展させられるようになっています。

まとめ

金融業界では、確実なシステムセキュリティやガバナンスの遵守、インシデントに強い高い可用性が不可欠です。小売業界では、顧客データの分析や需要予測、業務効率改善のためのクラウド構築が求められています。これらの業界特有のニーズにスピーディーかつ低コストで対応できるのが、AWSの大きな強みです。金融業界や小売業界で課題を抱える方は、AWSの導入を検討してみてはいかがでしょうか。

なお、当社は豊富な実績とノウハウを持ち、AWSに関する導入支援をワンストップで提供しています。AWSの移行や導入に興味のある方は、お気軽にご相談 新規ウィンドウで開くください。

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