自社のシステムをAWS(Amazon Web Services)に移行することを検討し始めたものの、費用がどれくらいかかるのかわからず、不安に思っている方も多いのではないでしょうか。時間的にも費用的にも大きなコストがかかるため、システム移行は大きな決断です。そこで本記事では、AWSの料金に関する疑問を解消するため、AWSの基本の料金体系や代表的なシステム構成を構築する際に必要となる概算の料金、AWS料金の見積もりを出す方法などを解説していきます。
目次
AWSの料金体系は?
まずは、AWSの基本の料金体系からご紹介します。
AWSの料金体系について
AWSは、基本的に従量課金制となっています。利用したサービスの量に応じて課金される仕組みで、月々の請求額は利用状況によって変動します。また、基本的には長期契約や最低利用量の縛りがないため、必要なときに必要なだけサービスを利用でき、コストを最適化しやすいのが特長です。利用を停止する場合も追加料金や解約金が発生しないため、変化するビジネスニーズに柔軟に対応できます。さらに、AWSには利用量が多ければ多いほど料金が安くなる、「ボリュームディスカウント」制度が用意されています。AWSのコスト削減を検討する際には、ボリュームディスカウントを活用することで、より費用を抑えることができるでしょう。
なお、料金が変動する基準は、利用するサービスによって異なります。ここでは代表的な2つのサービスの料金体系を紹介します。
Amazon EC2の料金体系
Amazon EC2(以降EC2)の場合は、インスタンスのタイプ、サーバー台数、ストレージの使用量(GB)、EC2から送信されたデータ転送量(GB)によって、1ヶ月あたりの料金が変動します。
Amazon S3の料金体系
Amazon S3(以降S3)の場合は、ストレージの使用量(GB)、S3から送信されたデータ転送量(GB)、読み込み回数(GETやSELECTなどのリクエスト数)、読み込み回数(PUTやCOPYなどのリクエスト数)によって、毎月の料金が変動します。
代表的なクラウド構成のモデルケースと概算の料金例
次に、モデルケースごとのAWS料金例をご紹介します。
- ※ ここでご紹介する料金例は、本記事執筆時点で算出されたものになります。今後、AWSのサービス価格改定や為替変動などにより、料金が変わる可能性があることをご了承ください。
ケース1:Webサイト構築
使用するサービス:Amazon LightSail
1つ目のケースは、Amazon LightSail(以降LightSail)を利用して、Webサイトを構築する想定です。LightSailを利用すると、数クリックでシンプルなWebサイトをAWS上に構築できます。
概算料金
月額合計料金:3.43 USD
前提
- Webページのデータ量は、7MBで構成(動画などを含まないシンプルなページ)
- 1日に3,000回、閲覧があった
- 想定プランの場合、月のデータ転送量が1TBまでは無料
サービス名 | 料金項目 | 使用量 | 単価(USD) |
---|---|---|---|
Amazon LightSail | 仮想サーバー | 1台×24時間×30.5日 | 3.43/月 |
通信料 (データ転送量) |
7MB×3000PV/日×30.5日 | - | |
月額合計料金 | 3.43USD |
この概算シミュレーションの詳しい構成図は、以下のページから確認できます。
ケース2:Windowsベースのファイルサーバー構築
使用するサービス:Amazon EC2 / Amazon EBS / Amazon VPC
EC2で仮想サーバーを利用し、Amazon EBS(以降EBS)でファイルデータを保存することを想定した構成です。Amazon VPC(以降VPC)で安全な接続環境を確保します。AWS上にファイルサーバーを構築すれば、運用コストを抑えられるといったメリットがあります。
概算料金
月額合計料金:472.67 USD
前提
- 2TBのデータを保存する見込み
- 1か月を730時間と想定
サービス名 | 料金項目 | 使用量 | 単価(USD) | 料金(USD) |
---|---|---|---|---|
Amazon EC2 | コンピューティング (Windowsなど) |
730時間 | - | 148.62 |
ストレージ容量 | 30GB | - | 2.88 | |
Amazon EBS | ストレージ容量 | 2TB | - | 110.59 |
スナップショット容量 | 3TB | - | 152.754 | |
Amazon VPC | Site-to-Site VPN | 730時間 | - | 35.04 |
データ転送量 | 200GB | - | 22.8 | |
月額合計料金 | 472.67USD |
この概算シミュレーションの詳しい構成図は、以下のページから確認できます。
Windows ファイルサーバーを AWS クラウドで構築 (入門編)|AWS
ケース3:Windowsベースの社内業務アプリのクラウド移行
使用するサービス:Amazon EC2 / Amazon EBS / Amazon RDS for SQL Server / ELB / Amazon VPN
構成としては、EC2で仮想サーバーを利用し、EBSでブロックストレージを利用。Amazon RDS for SQL Server(以降SQL Server)を社内業務アプリのデータベースとして利用し、ELBで負荷分散を行う想定です。VPNによってオンプレミスとクラウドを安全に接続します。
概算料金
月額合計料金:1027.68USD
前提
- Windowsのライセンス費用はEC2料金に含まれる
- 1か月を730時間と想定
- ストレージとして、EC2とEBSを組み合わせて利用
サービス名 | 料金項目 | 使用量 | 単価(USD) | 料金(USD) |
---|---|---|---|---|
Amazon EC2/Amazon EBS | m5.large 2vCPU/8Gメモリ |
730時間 | 0.216USD/時間 | 157.68 |
汎用SSDボリューム | 200GB | 0.12USD/GB | 24 | |
スナップショット | 200GB | 0.05USD/GB | 10 | |
Amazon RDS for SQL Server | インスタンス db.r5.large 2vCPU/16Gメモリ |
730時間 | 1.05USD/時間 | 766.50 |
データベースストレージ | 100GB | 0.138USD/GB | 13.80 | |
バックアップストレージ | 100GB | - | - | |
ELB | 1時間あたりの料金 | 730時間 | 0.0243USD/時間 | 17.74 |
ロードバランサーキャパシティーユニット | 0.5LCU ×730時間 | 0.008USD/時間 | 2.92 | |
Amazon VPN | 接続ごとの時間料金 | 730時間 | 0.048USD/時間 | 35.04 |
月額合計料金 | 1027.68USD |
この概算シミュレーションの詳しい構成図は、以下のページから確認できます。
オンプレミスサーバー上の社内業務アプリを AWS クラウドに移行(入門編)|AWS
ケース4:社内データ分析
使用するサービス:Amazon S3 / Amazon QuickSight(Enterprise Edition)
S3に、過去の売上データや顧客情報などを保存し、Amazon QuickSight(以降QuickSight)でデータ分析やレポート作成を行う構成です。QuickSightを使うことで、蓄積データの分析レポートを簡単に作成できます。
概算料金
月額合計料金:40.25USD
前提
- QuickSightは、年間契約で月額18USD/ユーザーとなる
- 料金表の小数点第三位以下は切り捨て
サービス名 | 料金項目 | 使用量 | 単価(USD) | 料金(USD) |
---|---|---|---|---|
Amazon S3 | ストレージ | 10GB | 0.025USD/GB | 0.25 |
PUT | 300リクエスト | 0.0047USD/1000リクエスト | 0 | |
GET | 300リクエスト | 0.00037USD/1000リクエスト | 0 | |
Amazon RDS for SQL Server | 作成者 | 1ユーザー | 24USD/ユーザー | 24 |
閲覧者 | 4ユーザー | 0.3USD/セッション/ユーザー | 16 | |
SPICE | 10GB | 0.38USD/GB | 0 | |
月額合計料金 | 40.25USD |
この概算シミュレーションの詳しい構成図は、こちらです。
AWSの料金の見積もり方法
ここまで紹介した通り、AWSの料金体系はサービスによって異なります。AWSでは、手軽に料金を把握できる料金計算ツール「AWS Pricing Calculator」を提供しています。
AWS Pricing Calculatorを使って料金の見積もりを行う
AWS Pricing Calculatorは、AWSが公式に提供している料金計算ツールです。以下URLより無料で利用できるうえ、日本語にも対応しています。
利用サービスを選択し、利用条件を入力すると、サービスごとにどれくらい料金がかかるのか、明瞭な見積もりを算出できます。また、見積もり結果をExcelやPDFにエクスポートして共有することも可能です。
なお、AWS Pricing Calculatorの使い方は、以下の記事で詳しく紹介しています。あわせてご参照ください。
AWS料金の見積方法とAWS Pricing Calculatorの使い方|TOKAIコミュニケーションズ
AWSの料金を見直したいと思ったら
AWSを運用していて、コストがかかり過ぎていると感じる方も少なくないでしょう。AWSの料金が高いと感じたら、コストを削減できないか構成やプランを見直してみましょう。
AWS料金の見直し、コストを削減するためには
AWSは、ユーザビリティを高めるため、コスト管理やコスト最適化に関するサービスを多く提供しています。コストを削減するためにはこれらのサービスを活用して、現状「どれくらいの費用がかかっているのか」を把握し、コストを削減できる余地がないか検証していくことが重要です。
たとえば「AWS Cost Explorer」(以降Cost Explorer)は、AWSが提供する代表的なコスト管理サービスのひとつです。Cost Explorerについて、より詳しく知りたい方は、以下の記事をお読みください。
AWS Cost ExplorerでAWS料金の見直しをしよう! 成功企業の活用事例を紹介|TOKAIコミュニケーションズ
またAWSには、長期利用を前提とした割引制度「リザーブドインスタンス(RI)」や「Saving Plans」といった仕組みも用意されています。これらのサービスを活用することで、さらに料金を節約できるでしょう。
AWSの料金で悩まれている方は当社までご相談を
「費用面が不透明で、予算管理が難しい」「AWSを利用する具体的なイメージが湧かず、導入に踏み切れない」「現在、AWSを利用しているものの、コストがかかり過ぎている」といった課題にお悩みの方は、ぜひTOKAIコミュニケーションズにご相談ください。数多くのAWS導入実績から培ったノウハウをもとに、お客様のニーズに最適なAWS環境を構築し、コスト最適化のための改善策を提案します。
まとめ
AWSへの移行やシステム刷新は、大規模なプロジェクトになることが多く、費用面の比較検証を慎重に進める必要があります。ここを軽視してしまうと、予算超過やコスト削減の遅延といった問題が発生する可能性もあります。そのため、AWSは料金見積もりを無料で提供できる「AWS Pricing Calculator」を公開しています。こうしたツールをうまく活用し、最適なコストプランを検討することが重要です。AWSの料金でお悩みの方は、専門家に相談する ことをおすすめします。