「AWS請求代行サービス」を活用すれば、AWSの利用料金が通常より安くなったり、煩雑なアカウント管理の業務からも解放されたりなど、さまざまなメリットを享受できます。ただ、請求代行サービスを利用する際は、いくつかのデメリットがあることも理解しておく必要があります。今回の記事では、AWS請求代行サービスの概要や仕組み、およびデメリットや利用時の注意点などについて紹介します。
目次
AWS請求代行サービスとは?
まず、AWS請求代行サービスの概要について、簡単に説明していきます。
AWSの請求やアカウント周りにおける悩み
AWS運用におけるよくある悩みには、以下のようなものが挙げられます。
円建てで支払いをしたい
AWSの利用料は通常、米ドル建ての支払いになりますが、米ドル建てでの請求は為替変動リスクに晒されます。支払日に変動レートが大きく動いた場合、それに比例して請求額が増える可能性もあります。そのため、一定金額で支払える円建て支払いを希望する企業も少なくありません。
クレジットカード払いではなく、請求書払いにしたい
AWSの請求は、基本的にクレジットカード支払い(米ドル建て)が基本とされています。クレジットカードで支払う場合、カード会社に外貨取扱手数料も併せて支払う必要があり、請求書払いに比べ、追加料金が加算されます。また、AWSの月額利用料が一定ラインを越えなければ、請求書払いを行えない仕組みとなっており、一企業が個別でAWS利用料金を請求書払いにすることは難しいのが現実です。
問い合わせ先を一元化したい
AWS運用時には、AWSに関する支援企業の窓口と連携して、やり取りを進めることが予想されます。例えば、AWSの公式サポートセンターや、AWS運用代行企業などがその対象です。また、問い合わせ内容も、技術面や請求面・アカウント管理など多岐にわたるため、自社の状況を毎回説明する手間が増えたり、問い合わせ先の管理が増えたりと、時間的および労力的コストを要することになりかねません。
アカウント管理の煩雑さを軽減したい
AWSのアカウント管理は、IAM(AWS Identity and Access Management)というサービスを用いて設定します。このIAM設定は、ユーザー・グループ・ロール・ポリシーなどさまざまな概念を組み合わせて行うもので知識と経験が必要です。そのため、専門的な知識がない人にとっては、新規アカウント作成ひとつとっても、ストレスや負荷のかかるタスクとなってしまうのです。
AWS請求代行サービスとは
上記に挙げた問題を解決してくれるのが、AWS請求代行サービスです。請求代行サービスを利用する場合、AWSと直接契約するのではなく、「AWSパートナー」として認可された企業が提供する請求代行サービスを契約する形となります。請求代行を利用すれば、日本円建ての請求書払い(銀行振込による後払い)ができたり、AWS利用料金が安くなったり、その他さまざまなメリットを享受できる場合があります。
AWS請求代行サービスの仕組み/AWSパートナーとは?
続いて、請求代行サービスの具体的な仕組みについて解説していきます。
AWSパートナーとは?
AWSパートナーとは、AWSから認定を受けた企業のことです。AWSパートナーネットワークの参加条件を満たしており、一定の売上高や導入実績、AWS認定資格保有者数などの条件を満たした企業が「AWSパートナー」として認定されています。AWSパートナーとして認可された企業は、AWSから販促サポートや特別割引・トレーニングなどのさまざまな支援を受けたり、一部のサービス料金を割引されたりなど、多くの待遇が与えられます。この待遇から享受した利益やメリットを請求代行のサービス内で顧客に還元しているのです。
また、請求代行サービスを行う企業の多くは、AWS利用料金の割引を実施しています。これは上述した待遇の一部です。AWSパートナーは、大量契約をまとめて行うことで「パートナー割引価格」が適用され、それを顧客にも還元しているのです。
なお、AWSパートナーには、条件に応じたさまざまな種類が存在します。従来は、テクノロジーパートナーとコンサルティングパートナーの2種類に大別されていましたが、2022年からは、以下の5種類に分類されるようになりました。
パートナー分類名 | 概要 |
---|---|
ソフトウェアパス | AWS上で実行または統合するソフトウェアを開発するAWSパートナー |
ハードウェアパス | AWSと連携するハードウェアを開発するAWSパートナー向け |
サービスパス | AWS活用のコンサルティング、マネージド、付加価値提供再販サービスなどを提供するAWSパートナー |
トレーニングパス | AWSトレーニングを販売、提供、またはビジネスとして取り込んでいるAWSパートナー |
ディストリビューションパス | AWSソリューションの再販と開発のために、ほかの企業を募集、教育、支援しているAWSパートナー(招待制) |
AWS請求代行サービスを利用する上での注意点・デメリット
ここまでAWS請求代行サービスについて紹介してきましたが、AWS請求代行サービスを利用する上では、いくつか注意すべきポイントがあります。これらの注意点を理解した上で、AWS請求代行サービスを利用するようにしましょう。
AWSの無料利用枠が使えなくなる
AWSと直接契約すると、1アカウントにつき条件付きの無料利用枠が付与されます。しかし、請求代行サービスを利用すると、これらの無料利用枠は適用されません。ただ、現実的なシステムをAWS上で構築・運用することを想定したとき、無料利用枠ではおさまらないケースがほとんどです。
AWSの定番サービスであるAWS EC2(以降、EC2)やAWS S3(以降、S3)を例に出して説明しましょう。EC2の無料利用枠は、12ヶ月(初回)の間で、月750時間までです。S3の無料利用枠は、12ヶ月(初回)の間で、5GBまでとなっています。AWS上でシステムをフル稼働させる場合、相応のストレージ容量やデータ転送量・利用可能時間の確保が必要となるため、はじめに付与される無料利用枠では不足することが予想できるかと思います。また、無料利用枠を使い果たした後で、請求代行を利用することも可能です。しかし、複数台での運用が決まっている場合などは、無料利用枠をすぐ使い果たす可能性が高いため、最初から利用料の割引などのメリットを享受できる請求代行を利用した方が、金銭的にも時間的にも節約につながるでしょう。
昨今はAWS請求代行サービスも競争が激しくなり、初期費用・初月手数料を無料で提供する企業も増えてきました。これらの内容を理解した上で、無料利用枠を使うかAWS請求代行サービスを使うか、どちらがお得に利用できるかを検討してください。また、自社だけで判断がつかない場合は、AWSパートナーに相談してみることもひとつの方法です。知識と経験豊富な担当者が、御社の状況をかんがみたベストプラクティスを提案してくれるでしょう。
AWSの一部サービスを利用することができなくなる
請求代行サービスを利用すると、以下のAWSサービスの一部が利用できなくなります。
- ルートユーザーのアカウント(IAMの設定を含む)
- AWSの利用料照会
- AWSサポート窓口の利用
ひとつずつ解説します。
ルートユーザーのアカウント(IAMの設定含む)
AWSのアカウントは、2種類あります。ルートユーザー(アカウント管理者)とIAMユーザーです。請求代行サービスを利用すると、ルートユーザーの権限をAWSパートナーに委任する形となり、IAMアカウントの作成・設定などはAWSパートナーが行います。IAMの設定とは、AWSアカウントのIDとアクセス権を管理するための設定のことです。
AWSパートナー(請求代行サービス会社)が、御社に必要な権限が付与されたIAMユーザーのアカウントを用意する流れとなります。IAMユーザーは、利用権限や権限開放にまつわる手続きが行えませんが、希望すればAWSパートナーが手続きを行ってくれるため、複雑なアカウント管理を任せられることになります。
AWSの利用料照会
上述した通り、請求代行を利用するとルートユーザーの権限を委託するため、AWSの利用料金が参照できなくなります。しかし、AWSパートナーによっては、独自のダッシュボード画面などを提供しており、AWS利用料・利用状況・その他請求に関する通知などを確認できる場合もあります。多くの請求代行会社は、気軽に相談できるサポート体制を整えているため、AWSと直接契約したときよりも、利便性が上がるケースも多いでしょう。
AWSサポート窓口の利用
AWS提供のサポートが利用できなくなります。その代わり、AWSパートナー企業を通じて同様のサポートが受けられます。直接AWSサポート窓口を使用するか、AWSパートナーの窓口を通してサポートを受けるかの違いです。AWSパートナーによって、サポート内容や時間・料金などには変動があり、サポート対応のクオリティも同様です。また、最近はAWS請求代行サービスを提供する企業も増加し、どの企業も他社に負けじと豊富なサポートを提供しています。
情報漏洩のリスクも
第三者にルートアカウントを委託することに対して不安を覚える人も少なくないでしょう。ただ、秘密保持契約などの契約を締結することで、ある程度のリスクヘッジは可能です。何よりも重要なのは、信頼できるAWSパートナーを選ぶことです。ひとくくりにAWS請求代行サービスといっても、提供するAWSパートナー企業により、受けられるサービスは異なります。そのため、AWSパートナーとしての実績から見て、信頼できるAWSパートナー企業を選ぶようにしましょう。
AWS請求代行サービスを検討している方はTOKAIコミュニケーションズにご相談を
最後に、TOKAIコミュニケーションズが提供しているAWS請求代行サービスについてご紹介します。
TOKAIコミュニケーションズの「AWSリセールサービス」
AWSパートナーとして多数の実績を有するTOKAIコミュニケーションズでも、ASW請求代行サービスを提供しており、支払いやお問い合わせ対応などを含めたAWS運用を総合的にサポートしています。AWSリセールサービスの具体的な内容は、以下の通りです。
- ご請求に関して
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- 円建て請求書払いという選択も可能に
- アカウント管理に関して
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- 煩雑なアカウント管理が不要に
- サポート窓口に関して
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- AWSサポートへの問い合わせ代行をはじめとしたサポート窓口の一元化
TOKAIコミュニケーションズ独自のサポート窓口を提供しておりますので、AWS請求や煩雑なアカウント業務などのお悩みをお持ちの方は、お気軽にご相談ください。
まとめ
AWS請求代行サービスを活用すれば、日本円建ての請求書払い(銀行振込による後払い)が実現できたり、煩雑なアカウント管理から解放されたり、さまざまなメリットを享受できます。ただ、無料利用枠が使えなくなったり、一部サービスが利用できなくなったりと、デメリットがあるのも事実です。請求代行サービスのデメリットを理解した上で、賢くAWS請求代行サービスを利用してください。請求代行サービスの利用を検討している方は、当社までお気軽にご相談ください。