近年、製造業でもクラウド利用が広がっています。その背景には、リモートワークの需要の高まりや、クラウドと製造業の相性の良さなどがあります。今回は国内製造業のクラウド利用状況を紹介するとともに、製造業の企業がクラウド利用を進めるべき理由を解説していきます。
目次
国内製造業のクラウド利用状況
まず、国内製造業のクラウド利用状況を確認していきます。
製造業の間でクラウド利用はどれくらい進んでいる?
総務省が公表している『令和3年通信利用動向調査の結果』 によれば、2021年の製造業のクラウド利用率は70%となっています。
7割がクラウド利用していると考えると、十分に進んでいるといえるでしょう。ただ、他の業界では、建設業が75.4%、情報通信業が92.6%となっており、製造業は他の業界よりもクラウド利用が進んでいない、と捉えることもできます。
なお、製造業の中でも、事業規模の違いによる差異はあるとみられています。
IPAが公表している『デジタル・トランスフォーメーション(DX)推進に向けた企業とIT人材の実態調査』 では、従業員1,001名以上の規模の大きい企業は80%の企業がDXに取り組んでいると回答しているのに対し、300名以下の企業ではDXに取り組んでいるのは26.1%というデータが公表されています。
これらのデータから、製造業においてもクラウド利用は進んでいるが、規模の小さな企業では未だクラウド利用を積極的に進められていないところも多い、ということが分かります。
製造業でクラウド利用が広がる背景
先述の通り、他業界と比べるとクラウド利用率は低いものの、製造業においてクラウド利用をしている企業は7割を占めます。ここからは、製造業でクラウド利用が広がっている理由について解説していきます。
データ活用を効率良く進めるため
製造業において、データを収集して分析・活用することで、さらなる生産性アップを目指そうという動きがあります。どの業界でもデータ分析・活用は注目されています。しかし製造業では、深刻な人手不足・技術の継承の難しさが相まって、工場内のデータ分析・活用が進んでいます。
オンプレミスでデータを収集する場合、サーバーの容量が枯渇するたびに、拡張を繰り返す必要があります。物理サーバーの調達には時間とコストがかかります。必要なときに必要な分だけ拡張できないので、効率がよくありません。
しかしクラウド利用であれば、必要なときに必要な分だけ容量を追加でき、利用した分だけの請求(従量課金制)のため、手間をかけずにデータ分析・活用が可能です。柔軟な利用が可能なため、最小限のコストで社内のデータレイク構築を進められます。
詳しくデータ分析について知りたい方は、以下の記事を参照してください。
DX推進と相性が良いため
製造業でクラウド利用が広がる背景には、近年経済産業省が先導して進めているDX(デジタル・トランスフォーメーション)との相性の良さも影響していると考えられます。
DXを推進するにあたって求められる要素の1つが、システムの柔軟性です。新たな技術が次々に開発され、急速に変化する現代において、システムにもそれに対応する柔軟性が求められています。その点、多くのクラウドサービスでは、新たな機能が続々とアップデートされ、ユーザーは常に最新の機能を利用することができます。製造業ではIoT関連の技術にも注目が集まっており、IoTを実現するためにクラウド化を進めるという動きが見られています。
製造業がクラウドを利用するメリット・デメリット
続いて、製造業がクラウドを利用するメリット・デメリットを紹介していきます。
クラウド利用のメリット/デメリット
クラウド利用時のメリット
主なメリットとしては、以下の2点が挙げられます。
- 初期費用がほとんどかからない
- インターネットに接続できる環境さえあれば、どこからでもアクセスできる
製造業に限った話ではありませんが、初期費用を抑えられる点はクラウドの大きな魅力の1つです。オンプレミスでは、システム構築までに時間がかかるうえ、サーバー機器の調達コスト、サーバールームの運用コストなども必要です。クラウドであれば、利用者の物理的な管理は必要なく(クラウドベンダー側が管理)、利用申込はインターネット上で行います。時間とコストを削減しながら、すぐに利用が可能です。
また、インターネットに接続できる環境さえあれば、どこからでもアクセスできる点も大きなメリットです。外出先や客先からインターネットに接続できれば、簡単にクラウドにアクセスできます。たとえば、営業担当者が手元のタブレット端末などで、在庫や製造の進捗状況をリアルタイムに確認可能です。「社内で勤務する誰かに状況を確認する」作業がなくなるため、効率的に業務を進められます。
クラウド利用時のデメリット
主なデメリット・注意点としては、以下の2点が挙げられます。
- 自社の業務にあった使い方ができるか事前に確認が必要
- セキュリティ対策が必要
クラウドはオンプレミスに比べると、性質上どうしてもカスタマイズ性が低くなってしまいます。場合によっては、システム連携がうまくできず、業務フローの変更を強いられる可能性もあります。自社で利用している既存システムとの連携面などに問題がないか、事前に確認しましょう。
また、クラウドであってもセキュリティ対策は、すべてクラウド事業者任せというわけにはいきません。自社でも対策が必要です。例えばAWSでは、AWS側が各リージョンやアベイラビリティゾーン(AZ)のインフラ面などに対して責任を負う一方で、OSやネットワークの構成などの点についてはユーザーが責任を持って管理する必要があると定めています。このことを、責任共有モデルと呼びます。利用者側でもセキュリティ対策が必要な部分がある、ということを理解しておきましょう。
AWSの責任共有モデルについて詳しく知りたい方は、以下の記事をご参照ください。
AWS活用法|AWSに必要なセキュリティ対策とは? AWSの責任共有モデルの解説
製造業がクラウド利用を進めるうえでの課題
ここまで、製造業がクラウドを利用するメリット・デメリットを紹介してきました。ここで、自社の業務・システムをクラウド化するか検討するにあたり、多くの企業が直面しているクラウド利用の課題を解説します。
1点目の課題は、人手不足によってクラウド移行を進められないという点です。
クラウドへの移行・利用は簡単に進められるものではなく、大規模なプロジェクトとして組織全体で取り組む必要があります。もし自社でリソースを用意できない場合は、外部のリソースを利用するのも選択肢の1つです。TOKAIコミュニケーションズでもクラウド導入・クラウド移行をサポートするさまざまなサービスを提供しています。
2点目の課題は、クラウド移行・利用にあたり、社員に慣れてもらう必要があるという点です。仮にクラウド移行をしても、社員が十分に活用できなければ期待していた効果は得られないでしょう。クラウド化のメリットを最大限享受するためには、できるだけ多くの社員に利用してもらう必要があります。新しいシステムに抵抗を覚える人もいるため、全社的な意識改革と丁寧な教育・研修が求められます。
当社では、クラウド導入のサポート、構築運用管理、内製化サポートまで幅広くご支援しています。詳しくは、以下サービスページをご確認ください。
当社の製造業クラウド利用事例を紹介
最後に、TOKAIコミュニケーションズのサービスを利用してクラウド化を進められた製造業2社様の導入事例を紹介します。
グンゼ株式会社様
グンゼ株式会社様には、これまで自社のオンプレミス環境で稼働させていた財務会計システムをAWSへ移行するにあたって、当社の「AWS導入サポート」をご利用いただきました。サーバーの減価償却が終了するタイミングでの移行で、サーバーを更新するのではなくクラウドに移行したほうがコストや運用負荷を削減できると考え、AWSへの移行を決められたとのことです。グンゼ株式会社様からは、当社のレスポンスの速さや提案力を評価いただいており、2019年4月に始まった移行プロジェクトは、無事に同年9月中旬にカットオーバーしています。稼働後も特に問題は起きておらず、今後は新たなデータ分析システムをAWS上に構築したいと話されています。
グンゼ株式会社様の導入事例について詳しく知りたい方は、以下の記事をご確認ください。
株式会社島精機製作所様
株式会社島精機製作所様は、2016年に生産管理システムの基盤をAWS上に移行後、AWSのさらなる利用範囲拡大のためのパートナーとして当社を選んでいただきました。基本的には自社での運用を考えられていたため、当社は経験に基づいた知識面でサポートさせていただきました。具体的には情報システム部とユーザー部門、2つのAWSアカウントの当社への移管や、Amazon Workspacesの導入などを実施し、さらなる業務効率アップやセキュアな高速インターネット回線の構築を実現しました。その後も当社はITパートナーとして、AWSのさらなる活用方法を提案しています。
株式会社島精機製作所様の導入事例について詳しく知りたい方は、以下の記事をご確認ください。
まとめ
ここまで紹介した通り、製造業でもクラウド利用が広がっています。この機会に自社でもクラウド移行を検討してみてはいかがでしょうか。クラウド移行に関しお悩みの方は、ぜひ当社までご相談 ください。
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