ご存知の通り、近年では多くの企業がオンプレミス環境からクラウドへ移行を進めています。ただ、多くの企業でクラウド移行が進む背景については、詳しく知らない方も多いのではないでしょうか。また、自社でもクラウド移行を検討すべきという声があるものの、クラウドに移行することで、具体的にどのような問題が解消するのかわからない、という悩みを抱えている方も多いと思います。
今回の記事では、移行が進む背景を紹介するとともに、クラウド移行によって解決できる問題について解説していきます。
目次
なぜ多くの企業がシステムのクラウド移行を進めているのか
クラウド移行が進む背景としては、以下の2点が大きく影響していると考えられています。
新型コロナウイルスの感染拡大に伴うリモートワークの需要の高まり
一つは、新型コロナウイルスの感染拡大による影響です。コロナ禍になって外出が制限された結果、多くの企業で自宅やサテライトオフィスから仕事をするための環境整備が進められています。そこで注目されているのがクラウドです。システムをクラウドに移行すれば、インターネット回線を通じて会社のシステムにアクセスが可能になり、リモートワークや在宅勤務といった働き方を比較的簡単に実現できます。
総務省が発表した令和3年版情報通信白書 民間企業におけるテレワークの実施状況 によれば、在宅勤務・リモートワークの実施率は2020年3月時点で17.6%だったのに対し、第1回緊急事態宣言発令時の2020年5月末時点では56.4%にまで上昇しています。その後、緊急事態宣言が解除されたことで実施率はいくらか低下しているものの、2021年3月時点で38.4%と、以前よりも高い水準で維持されていることがわかります。
DX(デジタル・トランスフォーメーション)の加速
もう一つの背景として挙げられるのが、DXの推進です。DXとは「デジタル・トランスフォーメーション」の略称で、最新のデジタル技術を活用した業務改善のことを指します。近年では、多くの企業で基幹システムの老朽化によって、メンテナンスコストがかさんでいることから、システム刷新が急務とされています。この問題の解決に欠かせないのがクラウドへの移行です。クラウドならハードウェア費用などイニシャルコストを抑えられ、スムーズに新システムの構築を進められるため、クラウド移行を検討する企業が増えていると考えられています。
総務省が2021年に実施した、デジタル・トランスフォーメーションによる経済へのインパクトに関する調査研究 によると、アンケートに回答した企業のうち、約4割がDXの取り組みを既に実施している・実施予定であると答えています。
オンプレミスから移行する際に押さえるべきポイント
多くの企業でクラウド移行が進んでいる一方で、クラウド移行したものの期待していた成果が得られていないという企業も少なくありません。ここからはクラウド移行を失敗しないために、システムをオンプレミスからクラウドに移行する際に、押さえておくべきポイントを解説していきます。
ランニングコストが増加する場合もあるため、事前にコストの計算を
まず注意すべきは、クラウドに移行したからといって、必ずしもコストを削減できるわけではないという点です。クラウドはイニシャルコストこそ抑えられますが、ランニングコストは従量課金制の場合が多いため、使い方次第ではオンプレミスより料金が高くなるケースもあります。移行前にしっかりとコストの見積もりをしておきましょう。なおAWSの移行に際しては、AWSが公式に提供しているAWS Pricing Calculator などを活用すると、詳細な見積もりを出すことができます。
既存システムとの連携への影響をチェックする
次に注意すべきは、既存の他システムとの連携です。移行に際してオンプレミス環境で行っていた連携が、できなくなってしまう可能性もあります。クラウドに移行した結果、これまで自動だった連携が、一部手動になってしまうケースなども想定されます。移行元となるシステムで行っていた連携処理をすべて洗い出し、移行先でどのように連携を実現するのか、事前にしっかりと決めておくようにしましょう。
AWS移行ツールを活用する
AWSは、AWSへの移行をサポートしてくれる、さまざまなツールを提供しています。
オンプレミスからの移行に役立つツールとしてはAWS Application Discovery Service などが挙げられます。本ツールは、移行元のオンプレミスの情報を取得してくれるため、現状のサーバー構成や利用しているミドルウェアなどの情報を簡単に一覧化できます。移行計画を立てるにあたっては、移行元の情報も重要となるため、オンプレミスからAWSへの移行時には非常に役立つツールです。
実際に移行を進める場面ではAWS Application Migration Service などが役に立ちます。このツールは、移行元の環境に導入することでクラウド上にデータをコピーしてくれるため、移行元を稼働させたまま移行作業を進められます。ダウンタイムを最小限に抑えられることから、移行の際にかかるユーザーへの負担を極力減らしたい場合に便利です。
AWSへの移行をスムーズに行うためにも、これらのツールをうまく活用していきたいところです。
クラウド移行をおすすめしたいケース
ここまで、クラウド移行が進む背景や移行時の注意点について紹介してきました。ここからは、どのような場合にオンプレミス環境からクラウドへの移行を検討するべきかを解説していきます。
ファイルサーバーの運用に困っている
現在オンプレミスでファイルサーバーを運用しており、管理コストの大きさに悩んでいるという方におすすめしたいのが、クラウドファイルサーバーへの移行です。オンプレミス環境でファイルサーバーを運用する場合、アップデートや容量の管理など、定期的な実施が必要な作業が多く、管理にもある程度のコストがかかります。
クラウドファイルサーバーとは、文字通りクラウド環境で構築されたファイルサーバーのことで、AWSはAmazon FSx for Windows File Server というサービスを提供しています。本サービスはフルマネージドサービスのため、定期的なWindows updateや、バックアップの取得を自動で実行してくれます。おかげで管理にかかるコストを大幅に削減できるほか、AD(Active Directory)の連携や既存ファイルサーバーで利用しているアクセス権限の移行が非常に簡単に行えます。
なお、TOKAIコミュニケーションズでは、「ファイルサーバー導入サポート」という、Amazon FSxシリーズの導入を支援するサービスを提供しています。ファイルサーバー運用にお困りの方は、ぜひ一度ご相談ください。
詳しくは、こちらのページをご参照ください。
AWSソリューション提供サービス | ファイルサーバー導入サポート
システムの可用性を高めたい
中には、可用性を高めるためにクラウド移行を検討しているケースもあるでしょう。AWSに移行して可用性を高めるには、マルチリージョン構成をとるのが効果的です。ただし、マルチリージョン構成をとるにしても、RTO、RPO要件を考慮したうえで最小な構成を考えなければならず、ある程度の専門知識が求められます。
なお、RTO(Recovery Time Objective)とは、システムの復旧までにかかる時間の目標を表す値です。RTOを極力小さくするためには、障害発生時の対応を手厚くするだけではなく、そもそもシステムを冗長化させるなど、構成の面から考える必要があります。RPO(Recovery Point Objective)とは、システムに障害が発生した際、どの時点まで復旧させるかの目標を表す値です。仮にRPOが24時間であれば、障害発生の24時間前のデータでの復旧が可能ということになります。値が小さければ小さいほど障害によるデータ喪失の量は少なくなる一方、取得すべきバックアップ量が多くなるため、その分コストもかかります。システムを運用していくうえでは、業務への影響を鑑みて、適切なRTO、RPO要件を定める必要があります。
TOKAIコミュニケーションズでは、「AWSマルチリージョン導入サポート」サービスを提供しています。これは、これまでの豊富な導入実績をもとに、それぞれのニーズに合った最適な構成を提案し、マルチリージョン構成でのAWS導入を支援するサービスです。可用性を高めつつ、マルチリージョンで気になりがちな費用面も極力抑えられるベストプラクティスを提案しています。
詳しくは、こちらのページをご参照ください。
AWSソリューション提供サービス | AWSマルチリージョン導入サポート
コストを抑えたい
オンプレミス環境では、導入したサーバーのスペックを変更するのは簡単ではなく、利用状況によっては無駄なコストが発生してしまうことがあります。また、定期的なリプレイスのコストも考慮しなければなりません。クラウドに移行すれば、これらの問題は解消されます。クラウドなら、利用状況に応じて簡単にスペックを変えられるため、余分なコストがかかることもなく、サーバーリプレイスの必要もありません。
ただ、この記事で説明した通り、利用方法次第ではオンプレミスよりもコストがかかってしまうケースもあります。コスト管理に自信がない場合は、導入支援サービスを利用するのも一つの手段です。TOKAIコミュニケーションズでは、AWSへの移行を支援する「AWSマイグレーションサービス」を提供しています。このサービスでは、これまでの移行実績をもとに、移行後のコストを試算してくれるため、移行によってどれだけコストを削減できるかが、ひと目でわかるようになります。
詳しくは、こちらのページをご参照ください。
AWSソリューション提供サービス | AWSマイグレーションサービス
まとめ
ここまで説明してきた通り、オンプレミスからAWSに移行することでさまざまなメリットを享受できます。在宅勤務やリモートワークが推奨される今こそ、移行のタイミングといえるでしょう。なお、TOKAIコミュニケーションズでは、今回紹介した3つのサービスのほかにも、AWSへの移行をサポートするさまざまなサービスを提供しています。今回の記事で興味を持たれた方はお気軽にご相談 ください。
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