「中国に拠点があり、同じシステムを中国でも使用したい」「中国向けのECサイトを公開したい」といった理由で、AWSの中国リージョン利用を検討している企業も多いのではないでしょうか。当社でも、AWSを中国で利用したい方向けにAWS中国リージョン対応ソリューション を提供しています。
今回は実際に、日本からAWS 中国(北京・寧夏)リージョン用のアカウントへログインし、他グローバルリージョンとの違い・特徴・課題となる点を確認してみました。
- ※ 本記事では「AWS 中国(北京・寧夏)リージョン」を「AWS 北京・寧夏リージョン」と記載します。
目次
AWS 中国(北京・寧夏)リージョンとは?
北京・寧夏にあるそれぞれのリージョンをまとめて、AWS中国リージョンと呼んでいます。
インフラの冗長性と高可用性は、AWSグローバル標準です。またAWSサービスのSLAは、他グローバルリージョンと同様となっています。
AWS 北京・寧夏リージョンは、様々な事情から利用方法が他グローバルリージョンと異なります。
詳しい特徴は、下記記事でも紹介しています。詳しく知りたい方は、参考記事を確認してください。
さて、他グローバルリージョンとの違いを確認していきます。
まずは、日本で利用している既存AWSアカウントのリージョン選択箇所より、AWS 北京・寧夏リージョンへ切り替えてみます。
このように、日本で利用している既存AWSアカウントでは、アジアパシフィック(香港)リージョンを確認できますが、AWS 北京・寧夏リージョンは確認できません。
ここでさらに、AWSから公開されているグローバルインフラストラクチャ図を確認してみます。
この図から確認できるように、AWS 北京・寧夏リージョンは他グローバルリージョンとネットワークから分離されています。
そのため日本で利用している既存AWSアカウントから、他グローバルリージョンを利用するのと同じ感覚でAWS 北京・寧夏リージョンを利用することはできません。以降で、AWS 北京・寧夏リージョンの特徴を説明します。
特徴1: AWS中国専用のAWSアカウントが必要
前述のとおりAWS 北京・寧夏リージョンは、他グローバルリージョンからネットワークが分離されています。
さらにAWSアカウントも分離されており、AWS中国専用のAWSアカウントを発行する必要があります。
AWSマネジメントコンソール・IAM・認証・エンドポイントも他グローバルリージョンと独立しており、既存のAWSアカウントとは連携ができません。
AWS中国専用のアカウント発行を検討している方は、当社でもサポートが可能です。当社までぜひご相談ください。
参考情報:AWS 北京・寧夏リージョンアカウントへログインするには?
AWS中国へログインするには、AWS中国用のURL からアクセスが必要です。アカウントID、IAMユーザー名、パスワードを入力し、ログインできます。
特徴2:利用できるサービスに制限がある
AWS 北京リージョンのAll Servicesを確認してみます。
- ※ 2022年2月時点の情報です。
AWS 北京リージョン
AWS東京リージョン
AWS東京リージョンと比較すると、AWS 北京リージョンで利用可能なサービスは明らかに少なく、制限があることが分かります。
頻繁に利用されているAWS Client VPN・Amazon Connectなどのサービスは利用ができません。
詳しくは、AWS中国サイト を確認してください。
特徴3:対応言語が英語と中国語のみ
使用可能な言語は、AWS中国にログインした後、確認できます。AWSマネジメントコンソール左下の言語設定箇所から確認可能です。
画面から確認できるように、対応言語は英語と中国語のみです。
AWS中国にログイン後の構築に大きな影響は与えませんが、サポートへの問合せも英語・中国語のみとなっているため注意が必要です。
特徴4:運営会社が中国企業
AWS中国を運営している会社は、AWSではなく中国企業です。
- AWS 北京リージョンの運営会社:Sinnet(北京光環新網)
- AWS 寧夏リージョンの運営会社:NWCD(寧夏西云)
AWS中国でカスタマーサポートを受けたい場合、AWSマネジメントコンソールの専用フォーム画面 からケースの作成を行います。(ケースの作成方法は、他グローバルリージョンと変わりません)
しかし、対応言語が英語・中国のみであること、作成したケースは中国の運営会社(SinnetもしくはNWCD)へ送信され、対応も一任されます。そのため「ケースの作成は英語で行ったが、そのあとの対応は中国語のみだった」という可能性もあります。
社内で中国語の対応ができる人員を準備しておくなど、事前に対応をしておくと安心です。
特徴5:支払い通貨は中国人民元のみ
AWS中国の支払い通貨は、中国人民元のみになります。
実際に請求画面を確認してみます。
上記図の通り請求される通貨は、$(USD)ではありません。
表記が、\(CNY)のため日本円支払いと勘違いしそうですが、支払い通貨は中国人民元になります。
さらにサポート費用についても、他グローバルリージョンとは運営会社が異なるため、リージョンごとに費用が請求されます。
特徴6:Web公開が一部制限されている
中国国内では、Web公開(ポート番号 80、443)が制限されています。
そのためAWS利用に関わらず、中国国内でWeb公開を行う場合には「ICP届出(中国政府への届出)」が必要です。また、Amazon Route53でドメインの取得は利用できません。
当社では「ICP届出支援サービス」を提供しています。利用検討されている方は、当社まで是非お問い合わせください。
ではICP届出を行っていない場合、AWSで中国国内向けにWeb公開をしたらどうなるかを検証してみます。(今回はAmazon EC2を使用し検証しました)
公開したサーバにアクセスすると、以下のようにエラーが表示されます。
Amazon EC2以外のAmazon S3などの他の方法で公開をした場合も、アクセスがブロックされます。
この事象の要因は、AWS側でサービスに制限をかけているため発生します。ICP届出を実施後、AWSへICPライセンスを登録して初めてWeb公開が可能になります。
まとめ
実際にAWS 北京リージョンへログインし、特徴を確認しました。他グローバルリージョンと違い、AWS中国の利用には、準備が必要であることがわかりました。
AWS中国専用のアカウント発行方法、ICP届出への対応、使用言語(中国語・英語)への対応など、対応の検討が必要な項目が幾つかあります。このような課題も、当社が提供している「AWS中国リージョン対応ソリューション 」でサポート可能です。ご利用を検討中の方は、当社までお問い合わせ ください。
作成者:鈴木
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